一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

チェックリストに保存

ミョウガの果実

質問者:   一般   宇治のヒカルゲンジ
登録番号6278   登録日:2025-11-03
趣味でミョウガについて調べています。登録番号2511のご回答で
「染色体のセット数が奇数のもの(n=55?)が選ばれてしまったようで、そのためになかなか結実しません。しかし時として運良く結実することもあります。」とありましたが
・染色体セット数が奇数の場合結実しにくい理由は?
・まれに結実する条件は?
知人が保全活動をされている里山では、ほぼ毎年果実がみられるそうですが
・染色体セットが奇数でも結実しやすい条件(環境?)などが
あるのでしょうか?

 以上お教えいただけるとありがたいです。
宇治のヒカルゲンジ様

Q&Aコーナーへようこそ。歓迎いたします。
 ミョウガ(Zingiber mioga (Thumb.) Roscoeの基本染色体数はx=11(配偶子細胞の染色体数)で、中国のミョウガの体細胞染色体数は2n=22、日本のミョウガは2n=55(n=55とは書かない)とされています。つまり、中国のミョウガは2倍体(2n=2x)、日本のミョウガは5倍体(2n=5x)と言うことになります。3倍体以上の植物を倍数体と呼んでいます。これまで、2倍体の植物から直接5倍体ができるプロセスは考え難いので、日本のミョウガはなぜ5倍体なのかは分からなかったようです。しかし、韓国のミョウガがこの種として初めて4倍体(2n=4x=44)であることが明らかになったので(H.Ikeda, et.al,2021)、日本のミョウガはおそらく、2倍体ミョウガの配偶子(半数染色体11)と4倍体全染色体(44)が含まれる配偶子(なんらかの原因でそうなった)が受精した結果生じた可能性があると考えられています。
 
 5倍体(他の奇数倍体も)の植物は奇数組の染色体セットを持っているので、有性生殖の際に減数分裂によって配偶子を形成する時、正常な染色体のペアリング(対合)ができず、対合が極度に不規則となってしまう。その結果生き残れない配偶子ができてしまい、種子は「しいな(秕)」になってしまう。つまり、正常な減数分裂が行われないということです。
 しかし、5倍体(他の奇数倍体も)の植物も次のような方法で種子を作ることはできます。
1)アポミクシス(無融合種子形成、無性生殖の一種):受精なしで種子形成が起きる。例えば、減数分裂が起きないまま卵細胞が種子形成をする「単為結実」など。
  (本コーナーで「アポミクシス」で検索していただくと沢山の質問が掲載されています。その中で5倍体については登録番号4974でタンポポの例があります。)
2)不規則な有性生殖:前述の2倍体と4倍体の雑種として日本の5倍体ができた可能性の場合のように、全染色体(2n=55)がそのまま配偶子となってしまう場合。
  ただし、その結果染色体数の増えた新しい倍数体ができることになる。
3)異数性の染色体ではあるが、生命力のある配偶子の形成:対合が正常でないけれども、いくつかの配偶子は偶々受精能力がある。
  ただし、形成される種子の多くは発芽/成長の力が弱いし、芽生えの形態や生命力も変異がみられる。

 奇数の倍数体が結実(種子形成)しやすい条件は特にないと思います。お知り合いの方のミョウガは毎年果実ができるということですが、同じ5倍体ですか。2倍体あるいは4倍体のミョウガということはありませんか。もし、5倍体ならば、上記1)〜3)のどれかのメカニズムが働いているのかもしれません。また、果実の中に成熟した種子が形成されているのでしょうか。果実の形成はかならずしも成熟種子の形成を伴うとはかぎりません。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2025-11-07