質問者:
一般
りょうすけ
登録番号6283
登録日:2025-11-24
こんにちわみんなのひろば
ハクサンシャクナゲの葉越冬の原理
私は北海道で林業をしていて
最近、仕事でハクサンシャクナゲを多く見かけます。寒くなってきて葉っぱはクルリと巻き-20℃以下の世界を乗り越えている姿を見かけます。
そこで毎回気になることがありまして、どのようなものを感知して葉っぱを丸めて巻いているのか非常に不思議に感じています。
寒さに対応して葉を丸めているのか?
それとも水分の吸水量で葉を丸めるのか、
寒くても開いているものと、完全に棒のように丸まっている物まであります。
なにか記述のある情報もなかなかみつけれず、、
もし何かわかることがありましたら教えていただけたら嬉しいです。よろしくお願い致します。
りょうすけ 様
興味深い質問、ありがとうございます。植物の凍結耐性を専門に研究されている石川雅也先生(東京大学大学院農学生命科学研究科・森林科学専攻)に回答をお願いしました。
【石川先生の回答】
この現象では、葉が巻くRollingと、葉柄の角度が垂直に近づき、葉が垂れ下がるCurlingという二つの変化が観察されます。オジギソウにみられる接触刺激による葉の就眠運動のように、短時間に起こるものではなく、凍結によりゆっくり進行するものです(葉柄や葉内部の水や氷の分布が変わることが原因らしいといわれています)。これらの変化は可逆的で、融解するとRollingもCurlingも元に戻るそうです。
生態的意義については、いろいろ言われていますが、
1.乾燥を防ぐ(蒸散の抑制)。
葉を巻くことで表面積を小さくし、水分が組織外に逃げるのを回避。
2.光阻害(ひかりそがい)を防ぐ。
光合成の機能は低温下で低下しますが、そこに強い日光が当たると、処理しきれない光エネルギーが「活性酸素」を生み出し、葉の組織(葉緑体)に障害が生じます(これを光阻害と言います)。葉を裏側に巻き込み、日光を受ける面積を最小限にすることで、このダメージを回避。
3.雪の重みを受け流す、葉の積雪中での機械的破損を回避。
4。耐寒性を高める。
などが考えられます。
なお、この現象を詳しく解析した論文により、葉の巻かない種と巻く種を交配した結果、この現象が遺伝的な形質であることが示唆されました。
ご質問にある「何を感知しているか」は、より難しい問題ですが、CurlingとRollingのうち、Rollingは凍結開始によって高耐寒性種においてのみ、生じ始め、温度の低下により巻きがさらに進むことが知られています。また、低温と短日などにより低温馴化(耐寒性が増加)すると、この反応は顕著になります。
一方、Curlingは、低温馴化によって高耐寒性種において生じ(凍結前にも少しおこる)、凍結により角度が垂直に近くなります。馴化していない個体はその程度が少ないようです。
=====
分子生理学的な立場から少し付け加えさせていただきます。細胞が低温を感じる分子レベルの仕組みとしては、温度が低下することにより、膜の流動性、液液相分離、活性型タンパク質の安定性などが変化することが引き金になると考えられており、低温馴化についても様々な研究が行われていますが、まだ不明な点が多いです。凍結応答の場合は、氷の結晶による機械刺激や損傷も関係すると考えられさらに複雑です。今後の研究の進展に期待したいと思います。
興味深い質問、ありがとうございます。植物の凍結耐性を専門に研究されている石川雅也先生(東京大学大学院農学生命科学研究科・森林科学専攻)に回答をお願いしました。
【石川先生の回答】
この現象では、葉が巻くRollingと、葉柄の角度が垂直に近づき、葉が垂れ下がるCurlingという二つの変化が観察されます。オジギソウにみられる接触刺激による葉の就眠運動のように、短時間に起こるものではなく、凍結によりゆっくり進行するものです(葉柄や葉内部の水や氷の分布が変わることが原因らしいといわれています)。これらの変化は可逆的で、融解するとRollingもCurlingも元に戻るそうです。
生態的意義については、いろいろ言われていますが、
1.乾燥を防ぐ(蒸散の抑制)。
葉を巻くことで表面積を小さくし、水分が組織外に逃げるのを回避。
2.光阻害(ひかりそがい)を防ぐ。
光合成の機能は低温下で低下しますが、そこに強い日光が当たると、処理しきれない光エネルギーが「活性酸素」を生み出し、葉の組織(葉緑体)に障害が生じます(これを光阻害と言います)。葉を裏側に巻き込み、日光を受ける面積を最小限にすることで、このダメージを回避。
3.雪の重みを受け流す、葉の積雪中での機械的破損を回避。
4。耐寒性を高める。
などが考えられます。
なお、この現象を詳しく解析した論文により、葉の巻かない種と巻く種を交配した結果、この現象が遺伝的な形質であることが示唆されました。
ご質問にある「何を感知しているか」は、より難しい問題ですが、CurlingとRollingのうち、Rollingは凍結開始によって高耐寒性種においてのみ、生じ始め、温度の低下により巻きがさらに進むことが知られています。また、低温と短日などにより低温馴化(耐寒性が増加)すると、この反応は顕著になります。
一方、Curlingは、低温馴化によって高耐寒性種において生じ(凍結前にも少しおこる)、凍結により角度が垂直に近くなります。馴化していない個体はその程度が少ないようです。
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分子生理学的な立場から少し付け加えさせていただきます。細胞が低温を感じる分子レベルの仕組みとしては、温度が低下することにより、膜の流動性、液液相分離、活性型タンパク質の安定性などが変化することが引き金になると考えられており、低温馴化についても様々な研究が行われていますが、まだ不明な点が多いです。凍結応答の場合は、氷の結晶による機械刺激や損傷も関係すると考えられさらに複雑です。今後の研究の進展に期待したいと思います。
石川 雅也(東京大学大学院農学生命科学研究科 森林科学専攻)
JSPPサイエンスアドバイザー
長谷 あきら
回答日:2025-12-14
長谷 あきら
回答日:2025-12-14
