質問者:
その他
kitat
登録番号6289
登録日:2025-12-12
紅葉時にアントシアンを合成する意味について調べていたところ、次のような論文が見つかりました。みんなのひろば
紅葉時のアントシアンの糖緩衝
https://academic.oup.com/jxb/article/75/11/3521/7626069
この論文に、「アントシアニンは葉の老化過程において糖緩衝剤として働き、糖による早期老化と光抑制を防止すると考えられる」という趣旨のことが記されていましたが、この意味するところが不明ですので、質問することになりました。
1.葉の老化過程において、晩秋に糖の濃度が上昇することは実験結果が示すとおり間違いのないことです。しかしこのことは植物にとってどんな利点があるのでしょうか?
2.糖による早期老化とは、浸透圧の上昇により細胞内で様々な働きが阻害されると考えていいのでしょうか?
3.糖による光抑制とは、光合成が抑えられエネルギーが生成されなくなると考えていいのでしょうか?そうなると落葉前の窒素の回収に支障が起こることがわかりますが、ならば余った糖をアントシアニンにしなくても、糖から直接エネルギーをつくればいいだけのように思えますがいかがでしょうか?
根本的な部分がよく分かっていないと思いますので、よろしくお願いいたします。
kitat様
ご質問をいただきありがとうございます。
挙げておられた論文の著者でいらっしゃいます、
「森林総合研究所 北海道支所、北尾光俊先生」にご回答いただきました。
下記のとおりです。
なお、ご質問の中の「光抑制」は「光阻害(photoinhibition)」のことだと思いますので、読み替えて回答しています。
との北尾先生からのコメントです。
【北尾先生からの回答】
1.ハウチワカエデの研究では、秋になると葉が生育する光環境にかかわらず、同じようなタイミングでデンプンの合成停止と、デンプンから糖への分解促進が生じていることがわかりました。これが、糖濃度が上昇する原因の一つとなります。デンプンから糖への分解は、転流のためのエネルギーを確保するためだと考えられています。
2.糖濃度の過剰な増加は老化を促進するシグナルとして働くと考えられています。また、糖は細胞内の浸透圧調整にもかかわってきますので、水に溶けないデンプンと違い、ある程度の濃度範囲で制御されていると考えられます。
3.葉が受け取った光のエネルギーは光合成によって糖やデンプンを作ることで消費されます。一方で、環境ストレスによって糖やデンプンの生産能力が落ちると、使いきれない余剰のエネルギーによって、長時間にわたる光合成活性の低下として定義される光阻害(photoinhibition)や活性酸素による障害(photooxidation)が生じやすくなります。
秋になると、ハウチワカエデの葉はデンプンを作らなくなります。一方で、日当たりのよい葉では光合成活性は紅葉期も維持されており、受け取った光のエネルギーを何らかの形で消費しなければなりません。しかしながら、貯蔵物質としてのデンプンは使えず、糖は前述の理由からそれほど増やすことができません。そのような状況で、光合成の流れを止めることなく、エネルギーを安全に消費するための代替経路として、二次代謝物であるアントシアニンの合成が利用されているのではないかと考えています。アントシアニンは糖を原料として作られたアントシアニジンに、さらにグルコースなどの糖が結合した配糖体の形で液胞内に集積します。糖濃度の過度の上昇を抑えることで、早期の老化を回避しつつ、光合成の流れをを滞らせないことで、光阻害を回避する役割を担っていると考えています。
=====
なお、紅葉現象については、みなさんの興味もたくさんあり、Q&Aでもいくつかありますので、そちらも参考にしてください。
登録番号0388, 3770, 5672
ご質問をいただきありがとうございます。
挙げておられた論文の著者でいらっしゃいます、
「森林総合研究所 北海道支所、北尾光俊先生」にご回答いただきました。
下記のとおりです。
なお、ご質問の中の「光抑制」は「光阻害(photoinhibition)」のことだと思いますので、読み替えて回答しています。
との北尾先生からのコメントです。
【北尾先生からの回答】
1.ハウチワカエデの研究では、秋になると葉が生育する光環境にかかわらず、同じようなタイミングでデンプンの合成停止と、デンプンから糖への分解促進が生じていることがわかりました。これが、糖濃度が上昇する原因の一つとなります。デンプンから糖への分解は、転流のためのエネルギーを確保するためだと考えられています。
2.糖濃度の過剰な増加は老化を促進するシグナルとして働くと考えられています。また、糖は細胞内の浸透圧調整にもかかわってきますので、水に溶けないデンプンと違い、ある程度の濃度範囲で制御されていると考えられます。
3.葉が受け取った光のエネルギーは光合成によって糖やデンプンを作ることで消費されます。一方で、環境ストレスによって糖やデンプンの生産能力が落ちると、使いきれない余剰のエネルギーによって、長時間にわたる光合成活性の低下として定義される光阻害(photoinhibition)や活性酸素による障害(photooxidation)が生じやすくなります。
秋になると、ハウチワカエデの葉はデンプンを作らなくなります。一方で、日当たりのよい葉では光合成活性は紅葉期も維持されており、受け取った光のエネルギーを何らかの形で消費しなければなりません。しかしながら、貯蔵物質としてのデンプンは使えず、糖は前述の理由からそれほど増やすことができません。そのような状況で、光合成の流れを止めることなく、エネルギーを安全に消費するための代替経路として、二次代謝物であるアントシアニンの合成が利用されているのではないかと考えています。アントシアニンは糖を原料として作られたアントシアニジンに、さらにグルコースなどの糖が結合した配糖体の形で液胞内に集積します。糖濃度の過度の上昇を抑えることで、早期の老化を回避しつつ、光合成の流れをを滞らせないことで、光阻害を回避する役割を担っていると考えています。
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なお、紅葉現象については、みなさんの興味もたくさんあり、Q&Aでもいくつかありますので、そちらも参考にしてください。
登録番号0388, 3770, 5672
北尾 光俊(森林総合研究所 北海道支所)
JSPPサイエンスアドバイザー
吉田 久美
回答日:2026-01-09
吉田 久美
回答日:2026-01-09
