一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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株全部が一つ葉のクローバー

質問者:   一般   アッちゃん
登録番号6290   登録日:2025-12-13
よろしくお願い致します。
 永年、四つ葉のクローバーを中心に、一つ葉~八つ葉まで、
集めています。押し葉にして、これまで被災地の学校などに
贈り、激励の気持ちとしたりしています。

 今年の夏、福岡市の小さな公園で探していたところ、
株全部が、一つ葉のクローバーを見付けました。
30センチ四方くらいの広さに10株ほどが同様に
一つ葉ばかりでした。
 その内、3株だけ鉢植えにして育てていますが、
次々に出てくる新葉も全て、一つ葉ばかりです。
 遺伝子異常なのでしょうか?
他に、このような事例の報告などがありますでしょうか? 

アッちゃん様

 Q&Aコーナーへようこそ。歓迎いたします。
 写真をありがとうございました。この質問の一部として添付させていただきたいと思います。クローバー(Trifolium repens:シロツメクサ、white clover)の葉は通常3枚の小葉(leaflet)からなる複葉で、2枚側小葉と1枚の頂小葉があります。小葉のその数にいろいろ変異があって、栽培されたり、採集されたりする植物の対象になっていますね。育種栽培物ですが、最大56というのがあるようです。アッちゃん様もいろいろ集めておられるとのこと、私も若い頃2〜7小葉まで採集したことがあります。単小葉は初めて写真をみました。ネットで調べてみると、韓国のクローバー愛好家の方が単小葉の写真をネット上に掲載しています。(Pinterest.hkang0386)。
 クローバーの花言葉は小葉の数(1−10)によって異なりますが、単小葉は「困難に打ち勝つ、初恋」とされていますので、単小葉クローバーの存在は一応知られているということでしょうか。しかし、一般的には(例えばAIによる)、きわめて稀とされています。
 さて、クローバーの多様な小葉数はなぜ起きるのかという疑問は本コーナーでも扱っていますので、読んでいただくと多少参考になるかもしれません。(例えば四葉のクローバーで検索していただくと、かなり多くの関連質問が見られます。)
簡単にまとめると、物理的原因(傷害など)、成長途上でのエラー、関連遺伝子の異常(突然変異)が原因です。突然変異であれば遺伝することになります。では、white cloverの単小葉変異はどれにあたるかということですが、残念ながら明確に解明されてはいないようです。
 single leafletのwhite cloverに関する学術的な研究論文は1938年にPennsylvania 州立大学、Regional Pasture Research StationのS.S.Atwoodの報告(A"One-leaved" white clover Unifoliolate mutation appears among 10,000 plants、Journal. of Heredity 29:239-240)しか見つかりませんでした。彼の研究は本コーナー登録番号4684中でも言及されていますので、是非それも読んでください。因みに、小葉の多様化と植物ホルモン、オーキシンとの関係も説明されています。 
 ここでは、単小葉を育てておられる様なので、参考になればと思いAtwoodの報告をもう少しくわしく説明しておきます。 彼は温室で種子から芽生えた苗をポットに移して育て、5月に戸外に出して、夏の終わりに全個体(10,000)について調べた。その中で一個体のみがunifoliolate(single leaflet)であった。この個体はWest Verginiaの放牧場で自然交配された種子からの200個体中の一本だったということである。単小葉個体からの3本の小さい挿し枝を4か月育ててみるとほどんどが単小葉だった(写真)。しかし、中には双小葉、三小葉や不規則なもの(葉身の融合したものなど)も多少混じった(写真)。
 当時は、もちろん遺伝学の分子レベルでのカラクリはまだ全く未知だった。彼は、この様は多様な小葉形成は、葉芽の成長(小葉の形態形成)の異なった段階で何らかの抑止(suppression)あるいは抑制(repressioin)がかかった結果であろうと推察した。例えば、葉の成長初期に2つの側小葉が完全に抑制されたら、単小葉となる。1つの側小葉が完全に抑制され、他の2つが正常に成長すれば、双小葉ができる。など。
 彼は単小葉の形質が遺伝するかどうかを調べようとしたが、花芽形成がなく、種子が得られなかったということでです。
 しかし、単小葉は非常に大きな母集団の中で自然交配によって生じた1個体であるから、その形質は潜性(劣性)対立遺伝子によるものである可能性が高いと推論しています。染色体は全く正常であった。
 なお、unifoliolateが見られる植物は、Atwood以前にLamprecht(1933)がエンドウで、その後Hartwig(1941)がセイヨウエビラハギ(sweetclover、Melilotus officinalis)で、Sjodin(1964)がソラマメでも報告されているが、いずれもマメ科なのは興味深い。
Goplen, B.P.(1967)は、ある潜性の多面発現遺伝子がsweetclover(Melilotus alba)のuniflolilateとカリフラワーの頭状花序の両方を調整していると報告していますが(Candian Journal of Genetics and Cytology 9:136-140), 他にもunifoliolateと花の構造とで同一遺伝子が働いていることを報じている報告もあるので、DNA解析が進めば、そのメカニズムも明らかになるでしょう。

 アッちゃん様の見つけた単小葉シロツメクサは、送ってもらった写真から判断しても、また他の一群のクローバーも全部単小葉であるようなので、おそらく遺伝的な変異である可能性は高いと思われます。確実に証明するのは、花が咲いたら自家受粉させ、種子を採取して次世代を観察することでしょう。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2025-12-24