質問者:
教員
arijigoku
登録番号6292
登録日:2025-12-13
チューリップの花の開閉は「温度傾性」によることが知られています。みんなのひろば
チューリップの花の開閉運動について
生徒がこれを調べたところ新たな疑問が生じましたので質問します。
いろいろ条件を変えて実験し「温度傾性」であることは確認できました。確かに開花に関しては温度の上昇が原因になっていました。ところが閉じる要因は温度低下だけではないのではという疑問です。
次のような実験結果がありました。
・花を朝、10℃から20℃に移し開花したものを20℃のまま夕方まで置いておくと夕方には閉じてくる。
・冷蔵庫を利用し、20℃→0℃→20℃→0℃→20℃と温度上昇と低下を繰り返したところ、午後の20℃の時にはあまり開かない。 など
これについては、体内時計による「概日リズム」によるとの情報を得ました。
そこで、生徒の結論としては「開花については「温度傾性」による要因が強く、閉花については「概日リズム」による要因が強くなる」と考えました。
この考えは正しいでしょうか。チューリップの開閉運動における「概日リズム」のはたらきについて教えていただきたいと思います。
arijigoku様
こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「チューリップの花の開閉運動について」にお答えします。
花の開閉を制御するのは主に温度、光、概日リズムで、チューリップの花の開閉は仰る通り温度に依存する温度傾性とされています。温度と光に関しては本Q&Aコーナーでもいくつか解説されており(登録番号1381, 3765など)、特にチューリップについては登録番号0344で温度傾性であることを示す実験とその仕組みが詳しく説明されています。しかし、概日リズムについてはあまり言及されていません。
花の開閉についての詳細な総説にvan Doorn and van Meeteren, 2003 (J. Exp Bot. 54:1801-1812 / DOI: 10.1093/jxb/erg213)や van Doorn and Kamdee, 2014 (J. Exp. Bot. 65: 5749-5757 / DOI: 10.1093/jxb/eru327) がありますが、これらの総説でもチューリップの開閉運動における概日リズムの関与についての記述はありません。明らかになっていないようです。しかし、一般に日周運動は概日リズムに制御されるので、開閉を繰り返すチューリップの場合も概日リズムが関与するのではないかと思います。
ご紹介いただいた生徒さんの実験では、20℃でも夕方には閉じる、午後には開かないということですので、チューリップの閉花は概日リズムによるとしてよいように思います。ただし、基本的なこととして、ある現象に概日リズムがあると言うには、温度や光などの環境条件を一定にした時にその現象が数日間繰り返されることを示す必要があります。紹介された実験では夕方には花の老化が進んで閉じたという可能性を排除できません。そのような一過性のものではないと言うためには、開閉は数日間繰り返されることを示す必要があります。また、最初の実験では光条件は自然条件だったのでしょうか? もしそうであるならば、夕方に花が閉じたのは暗くなったためかもしれません。チューリップの花の開閉は温度傾性であって光は関係しないからそのような可能性は無いとお考えかもしれませんが、先入観にとらわれないほうがいいです。同様のことが冷蔵庫を利用した実験でも言えます。この実験では冷蔵庫の中は暗かったでしょうから、温度上昇と低下の繰り返しの効果ではなく、実は明と暗の繰り返しの効果を見ていたのかもしれません。温度傾性か光傾性かをしっかり区別できる実験設定を工夫されるとよいでしょう。
チューリップの開花については温度傾性による要因が強く、閉花については概日リズムによる要因が強くなるとのお考えは概ね正しい方向にあるように思われますが、さらに厳密な実験をされることをお勧めします。概日リズムの関与が証明されれば、開花も影響されるはずですから概日リズムと温度変化の組合せで開閉が行われているのでしょう。また、概日リズムは光による制御を受けますので光傾性もありそうです。まだまだ解決されるべき問題があるようです。
こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「チューリップの花の開閉運動について」にお答えします。
花の開閉を制御するのは主に温度、光、概日リズムで、チューリップの花の開閉は仰る通り温度に依存する温度傾性とされています。温度と光に関しては本Q&Aコーナーでもいくつか解説されており(登録番号1381, 3765など)、特にチューリップについては登録番号0344で温度傾性であることを示す実験とその仕組みが詳しく説明されています。しかし、概日リズムについてはあまり言及されていません。
花の開閉についての詳細な総説にvan Doorn and van Meeteren, 2003 (J. Exp Bot. 54:1801-1812 / DOI: 10.1093/jxb/erg213)や van Doorn and Kamdee, 2014 (J. Exp. Bot. 65: 5749-5757 / DOI: 10.1093/jxb/eru327) がありますが、これらの総説でもチューリップの開閉運動における概日リズムの関与についての記述はありません。明らかになっていないようです。しかし、一般に日周運動は概日リズムに制御されるので、開閉を繰り返すチューリップの場合も概日リズムが関与するのではないかと思います。
ご紹介いただいた生徒さんの実験では、20℃でも夕方には閉じる、午後には開かないということですので、チューリップの閉花は概日リズムによるとしてよいように思います。ただし、基本的なこととして、ある現象に概日リズムがあると言うには、温度や光などの環境条件を一定にした時にその現象が数日間繰り返されることを示す必要があります。紹介された実験では夕方には花の老化が進んで閉じたという可能性を排除できません。そのような一過性のものではないと言うためには、開閉は数日間繰り返されることを示す必要があります。また、最初の実験では光条件は自然条件だったのでしょうか? もしそうであるならば、夕方に花が閉じたのは暗くなったためかもしれません。チューリップの花の開閉は温度傾性であって光は関係しないからそのような可能性は無いとお考えかもしれませんが、先入観にとらわれないほうがいいです。同様のことが冷蔵庫を利用した実験でも言えます。この実験では冷蔵庫の中は暗かったでしょうから、温度上昇と低下の繰り返しの効果ではなく、実は明と暗の繰り返しの効果を見ていたのかもしれません。温度傾性か光傾性かをしっかり区別できる実験設定を工夫されるとよいでしょう。
チューリップの開花については温度傾性による要因が強く、閉花については概日リズムによる要因が強くなるとのお考えは概ね正しい方向にあるように思われますが、さらに厳密な実験をされることをお勧めします。概日リズムの関与が証明されれば、開花も影響されるはずですから概日リズムと温度変化の組合せで開閉が行われているのでしょう。また、概日リズムは光による制御を受けますので光傾性もありそうです。まだまだ解決されるべき問題があるようです。
竹能 清俊(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2025-12-26
