一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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動物に食べられる木と食べられない木

質問者:   一般   もりちゃん
登録番号6295   登録日:2025-12-30
こんにちわ
私は北海道で趣味や仕事でもよく森で活動します。そこでいつも疑問に思う事があります。

近年増加傾向にある「シカ」の被害はよく山でみられ様々な木が食べられています。しかしオオバクロモジというクスノキ科の低木は殆ど被害が出ていません。

クスノキ系の木は殺菌作用などが含まれることをよく聞きますがこちらのクロモジ類の樹木に、
鹿などの動物から身を守るための忌避成分のようなものは備えられているのでしょうか?
植物の中には食害から身を守るため?の毒が元々あるような樹木もあると思いますので、
こちらのクロモジの成分についても非常に気になります。もし何かわかることがありましたら教えていただけたら嬉しいです。よろしくお願いいたします
もりちゃん 様

日本植物生理学会・みんなのひろば・「植物Q&A」に質問をお寄せくださり有難うございます。

シカが増え、林床の植物が食べられています。やがて上層木となる種も最初は林床の芽生えですから、森林の更新自体が危ぶまれるのです。これは大問題で、日本全国でさまざまな研究がなされています。2014年に不嗜好性植物のリストが発表されています。是非ご覧ください。

橋本佳延・藤木大介(2014)日本におけるニホンジカの採食植物・不嗜好性植物リスト.人と自然 25:133-160.

https://www.hitohaku.jp/publication/r-bulletin/No25_10-1.pdf

この論文が参照した文献をみると、北海道のものは2件であとは西日本のデータが多いことがわかります。「クロモジ」は採食植物になっています。

私は、シカの密度で説明できるのではないかと思いました。最初は嫌いなものは残すのですが、食べるものが減っていくと仕方なく食べるようになる。すなわちシカ密度が低いところでは不嗜好性と判断された樹木が、シカの密度が高まるにつれて採食植物とされる、というものです。この説明があっているかどうか、シカと植物の関係を研究している鈴木牧先生に意見を聞きました(東京大学大学院新領域創成科学研究科・准教授、https://researchmap.jp/maki-suzuki)。

【鈴木先生の回答】
シカの選好性は、元々の相対的な好みと、その場所・時での利用可能性とで決まると考えられています。シカ密度が高まるにつれ、選好性が高い餌は食われて利用可能性が低下していき、残った選好性の低い種も喰われるようになっていきます。オオバクロモジについては、本州の秋田県などではシカによる採食報告があります。この種は北海道では渡島半島付近に分布しています。半島南部はまだシカ密度が低く、オオバクロモジよりも選好性の高い餌が残っていて、オオバクロモジは食われにくいかもしれません。しかし、すでに半島北部の苫小牧あたりは激害地域に入ってますので、南部でもそのうちオオバクロモジが食われだす可能性が高いと思います。 ちなみに近縁種のクロモジについては、多くの地域では嗜好性種として報告されているのですが、不嗜好性種となっている地域もあります。例えば房総半島では、シカ密度が中程度の場所でも選択的に残されています。このように、元々の嗜好性についても、地域個体群間で差がある可能性があります。
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一般的なシカ密度による傾向にくわえて、ローカルなあるいは個体群による違いもあるということのようです。

さて、お尋ね(オオバ)クロモジの成分についてです。クスノキ科はクスノキから樟脳がつくられるように、この手の物質が多く、分類の助けにもなります。クロモジは高級つまようじにも用いられ、いい匂いがします。成分についてはよく研究がなされています。たとえば、熊本大学薬学部薬用植物園のデータベースには、クロモジの生薬名の釣樟(チョウショウ)、中国名の大葉釣樟、成分であるシネオール、ゲラニオール、リナロールの名前と構造式がでています。これらは炭素数が10個のモノテルペンの仲間ですね。オオバクロモジについても同様の解説がありますが、こちらにはリナロールの異性体が2つ載っており、ゲラニオールは出ていません。

https://www.pharm.kumamoto-u.ac.jp/yakusodb/

養命酒のサイトをみると、養命酒の主成分は、クロモジの生薬の烏樟(うしょう)と桂皮(これもクスノキ科のシナモン)などです。烏樟は枝を乾燥させたものだそうです。一方、釣樟は根を乾燥させたものです。

https://www.yomeishu.co.jp/yomeishu/about/product.html

音ならAIが再現してくれますが、匂いは無理です。しかし、それぞれの名前で検索すると代表的なにおいを教えてくれます。
寺島 一郎(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2026-01-13