質問者:
教員
化学の時間
登録番号6300
登録日:2026-01-27
木材はセルロース・ヘミセルロース・リグニンを主成分としています。成分を抽出して化学変化させて活用しようとするとき、例えば、セルロースは表面に-COOHを導入して、溶けやすくしたり、セルロースナノファイバーとして活用できますし、リグニンは、近年、改質リグニンとして、活用が期待されています。しかし、ヘミセルロースは使い道がはっきりしていないように思えます。また、酸で分解しやすかったり、様々な種類の糖が結合していることから活用が難しかったりと、扱いが難しく、邪魔者のように扱われているのではないかと考えます。ヘミセルロースの成分は使えますか?
みんなのひろば
ヘミセルロースは使えない?
化学の時間 様
興味深い質問、ありがとうございます。こちらの手違いにより回答が遅れてしまったことをお詫びします。登録番号6299と同様に、神奈川大学で特任教授をされている西谷和彦先生に回答をお願いしました。
【西谷先生の回答】
登録番号6299の関連質問としてお答えします。
広葉樹のヘミセルロースの主成分であるキシランからはキシリトールやキシロオリゴ糖がつくられ、甘味料やプレバイオティクスとして利用されています。キシロースからは更にフルフラールが作られ樹脂などの化学原料として広く使われています。また針葉樹のグルコマンナンは食品乳化剤やバイオ材料として研究が進んでおり、ヘミセルロース自体は利用されていないわけではありません。しかし、ご指摘の通り、多糖類としてのヘミセルロースの特性を活かした利用とは言えないですね。その最大の理由は、細胞壁の中でのヘミセルロースの本来の構造や機能が今尚十分に解明されていないことにあります。また、ヘミセルロースは構造が多様で、均質な分子ではなく、しかも、その複雑な構造を崩さずに単離することが難しいことも利用を妨げているといえます。分解産物としての利用が多いのはこのためかと思います。
もう一つの理由は、現在の主要な木材利用先であるパルプ工場の工程にあります。紙を作るためのクラフトパルプ工程では強アルカリと高温で細胞壁を処理します。その過程でヘミセルロースの多くは分解され本来の分子構造を失い、黒液と呼ばれる副産物となり、その大部分は燃料として使われているようです。木質の加工プロセスがセルロース利用に最適化されていることが、ヘミセルロースの活用を難しくしていると言えます。
ですから、決してヘミセルロースが使えないというわけではありません。登録番号6299への回答でも紹介しました新しい細胞壁の分離技術の開発が進み、安全で低コストの方法で、木材からセルロースやリグニンと共にヘミセルロースを有用な形で取り出せるようになれば、生分解性プラスチックや、食品包装の酸素バリアフィルム、ナノ材料、医療素材、食品素材などのこれまでの用途以外にも、新規の分子素材として利用範囲が広がると期待できます。
木質細胞壁は炭素換算で地球バイオマス50%に上ると推定でき、ヘミセルロースはその25%を占めますので、全バイオマスの1割以上を占めることになります。この豊富な再生可能な分子資源がほとんど未利用のまま残っていることは、残念というより寧ろ嬉しいことです。きっと使えるようになると思います。そのための革新的な利用法の開発を期待したいですね。
興味深い質問、ありがとうございます。こちらの手違いにより回答が遅れてしまったことをお詫びします。登録番号6299と同様に、神奈川大学で特任教授をされている西谷和彦先生に回答をお願いしました。
【西谷先生の回答】
登録番号6299の関連質問としてお答えします。
広葉樹のヘミセルロースの主成分であるキシランからはキシリトールやキシロオリゴ糖がつくられ、甘味料やプレバイオティクスとして利用されています。キシロースからは更にフルフラールが作られ樹脂などの化学原料として広く使われています。また針葉樹のグルコマンナンは食品乳化剤やバイオ材料として研究が進んでおり、ヘミセルロース自体は利用されていないわけではありません。しかし、ご指摘の通り、多糖類としてのヘミセルロースの特性を活かした利用とは言えないですね。その最大の理由は、細胞壁の中でのヘミセルロースの本来の構造や機能が今尚十分に解明されていないことにあります。また、ヘミセルロースは構造が多様で、均質な分子ではなく、しかも、その複雑な構造を崩さずに単離することが難しいことも利用を妨げているといえます。分解産物としての利用が多いのはこのためかと思います。
もう一つの理由は、現在の主要な木材利用先であるパルプ工場の工程にあります。紙を作るためのクラフトパルプ工程では強アルカリと高温で細胞壁を処理します。その過程でヘミセルロースの多くは分解され本来の分子構造を失い、黒液と呼ばれる副産物となり、その大部分は燃料として使われているようです。木質の加工プロセスがセルロース利用に最適化されていることが、ヘミセルロースの活用を難しくしていると言えます。
ですから、決してヘミセルロースが使えないというわけではありません。登録番号6299への回答でも紹介しました新しい細胞壁の分離技術の開発が進み、安全で低コストの方法で、木材からセルロースやリグニンと共にヘミセルロースを有用な形で取り出せるようになれば、生分解性プラスチックや、食品包装の酸素バリアフィルム、ナノ材料、医療素材、食品素材などのこれまでの用途以外にも、新規の分子素材として利用範囲が広がると期待できます。
木質細胞壁は炭素換算で地球バイオマス50%に上ると推定でき、ヘミセルロースはその25%を占めますので、全バイオマスの1割以上を占めることになります。この豊富な再生可能な分子資源がほとんど未利用のまま残っていることは、残念というより寧ろ嬉しいことです。きっと使えるようになると思います。そのための革新的な利用法の開発を期待したいですね。
西谷 和彦(神奈川大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
長谷 あきら
回答日:2026-03-12
長谷 あきら
回答日:2026-03-12
