質問者:
自営業
ほしの王子
登録番号6303
登録日:2026-02-09
植物は気孔を通して外気と物質のやり取りをしています。この気孔ですが、根で吸収した水分を放出(蒸散)して、そのことが更に根で養水分を吸収するエネルギーとなっていることは学生の時に習いました。この気孔は光合成をおこなうにあたり、外部から二酸化炭素を吸収する必要があります。この時には気孔の蒸散は止まり、養水分の吸収エネルギーもオフになることになります。植物の気孔について
ここで疑問なのですが、水と二酸化炭素と言う単純な二つの無機物から、現在の科学でもなかなか合成が難しい有機物の合成を葉の中で行っている精密な組織を持つ植物が、どうして放出用の気孔と吸収用の気孔の別々の機能を備える進化を遂げなかったのでしょうか?別々の機能を持つ気孔が備わっていれば、植物は養水分の放出をしながら光合成のための二酸化炭素を同時に別の組織で吸収することができ、放出と吸収と言うどちらかというジレンマに合わずに済みます。よろしくお願いします。
ほしの王子様
日本植物生理学会・みんなの広場・「植物Q&A」に質問をおよせくださり有難うございます。当方の手違いもあり、回答が遅くなってしまい申し訳ございません。
気孔は葉などの表皮にあり二つの孔辺細胞の間に生ずる「穴」で、水蒸気、二酸化炭素、酸素、気体なら何でも通してしまいます。
確かにご指摘のように、根から地上部への蒸散流はおもに液体の水とそれに溶けた栄養分(水にとけたCO2も!)です。葉には液体の水の状態で届き、葉脈の木部細胞や葉脈の終点である仮道管脈端からにじみ出た水は蒸発し気体(水蒸気)となります。細胞間隙は水蒸気によってほぼみたされ(註)、気孔から出ていくのは気体の水蒸気です。たんなる穴ですから、気孔の外側と内側に気体の濃度差があれば濃度差に応じて気体は拡散します。葉に光が当たり葉緑体の光合成によってCO2が固定されれば、葉の細胞間隙(細胞と細胞との間の空間)のCO2濃度は外気のCO2濃度よりも低くなるので、CO2は外気から気孔を介して葉の内部に入ります。逆に、光合成によってO2が発生するので、葉の内部のO2濃度の方が外気よりも高くなり、O2は気孔を通って外気側に出ていきます。光合成によって吸収されるCO2と発生するO2の分子数には大差はないので、CO2やO2だけの問題ならば、これらの分子の動きはほぼ静止空気中の気体分子の拡散の問題としてとり扱うことができます。ところが、特に外気が乾燥している場合に気孔が大きく開いた場合の蒸散の速度(葉の面積当たり、単位時間あたりの水蒸気のモル数で表現します)は、同じ単位で表したO2発生速度やCO2固定速度で表した光合成速度の1000倍に達することもあります。したがって、葉からの水蒸気を含む空気の流れが生じます。これを静止空気としてとりあつかうことにはやや無理があります。小学校で習った流水算の世界を思い浮かべてください。光合成によって発生したO2はこの流れにのりますし、逆に葉の内部に拡散するCO2は押し戻されることになります。
よく空気の21%(分圧や分子数)はO2だ、などといいますが、これは乾燥した空気の場合です。たとえば気温25℃で水蒸気が飽和すると空気中の分子の3%以上が水蒸気となります。これが流れのもとになるのです。
註:葉は、気孔のような小さな穴があるだけのほぼ閉じた空間です。細胞の表面は濡れているので、葉の内部の空気の相対湿度はほぼ100%とみなします。しかし、最近、乾燥の非常に厳しい環境では、葉の内部の空気の水蒸気濃度も葉の温度の飽和水蒸気濃度よりもかなり低いことが報告されています。そのような乾燥環境でも、葉の細胞間隙の空気は外気よりもはるかに湿ってはいるのですが・・・。
日本植物生理学会・みんなの広場・「植物Q&A」に質問をおよせくださり有難うございます。当方の手違いもあり、回答が遅くなってしまい申し訳ございません。
気孔は葉などの表皮にあり二つの孔辺細胞の間に生ずる「穴」で、水蒸気、二酸化炭素、酸素、気体なら何でも通してしまいます。
確かにご指摘のように、根から地上部への蒸散流はおもに液体の水とそれに溶けた栄養分(水にとけたCO2も!)です。葉には液体の水の状態で届き、葉脈の木部細胞や葉脈の終点である仮道管脈端からにじみ出た水は蒸発し気体(水蒸気)となります。細胞間隙は水蒸気によってほぼみたされ(註)、気孔から出ていくのは気体の水蒸気です。たんなる穴ですから、気孔の外側と内側に気体の濃度差があれば濃度差に応じて気体は拡散します。葉に光が当たり葉緑体の光合成によってCO2が固定されれば、葉の細胞間隙(細胞と細胞との間の空間)のCO2濃度は外気のCO2濃度よりも低くなるので、CO2は外気から気孔を介して葉の内部に入ります。逆に、光合成によってO2が発生するので、葉の内部のO2濃度の方が外気よりも高くなり、O2は気孔を通って外気側に出ていきます。光合成によって吸収されるCO2と発生するO2の分子数には大差はないので、CO2やO2だけの問題ならば、これらの分子の動きはほぼ静止空気中の気体分子の拡散の問題としてとり扱うことができます。ところが、特に外気が乾燥している場合に気孔が大きく開いた場合の蒸散の速度(葉の面積当たり、単位時間あたりの水蒸気のモル数で表現します)は、同じ単位で表したO2発生速度やCO2固定速度で表した光合成速度の1000倍に達することもあります。したがって、葉からの水蒸気を含む空気の流れが生じます。これを静止空気としてとりあつかうことにはやや無理があります。小学校で習った流水算の世界を思い浮かべてください。光合成によって発生したO2はこの流れにのりますし、逆に葉の内部に拡散するCO2は押し戻されることになります。
よく空気の21%(分圧や分子数)はO2だ、などといいますが、これは乾燥した空気の場合です。たとえば気温25℃で水蒸気が飽和すると空気中の分子の3%以上が水蒸気となります。これが流れのもとになるのです。
註:葉は、気孔のような小さな穴があるだけのほぼ閉じた空間です。細胞の表面は濡れているので、葉の内部の空気の相対湿度はほぼ100%とみなします。しかし、最近、乾燥の非常に厳しい環境では、葉の内部の空気の水蒸気濃度も葉の温度の飽和水蒸気濃度よりもかなり低いことが報告されています。そのような乾燥環境でも、葉の細胞間隙の空気は外気よりもはるかに湿ってはいるのですが・・・。
寺島 一郎(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2026-03-05
