一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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カーネーションの木質化

質問者:   会社員   yunz
登録番号6309   登録日:2026-03-10
去年鉢植えで購入したカーネーションが木質化してしまいました。
夏前に一度半分ぐらい切り戻しました。
現在、下半分ぐらいが木質化しています。
上半分が緑です。
春に向け切り戻しをしたいのですが、どの部分で切ったらいいか教えてほしいです。

・木質化した茶色いところできっていいのか。
・緑の部分がなくなるほど切っていいのか。
・それとも緑の部分で切った方がいいのか。
・時期はいつがいいのか。

お願いいたします。
yunz様

 Q&Aコーナーへようこそ。歓迎いたします。しかし、ご質問の内容はカーネーションの切り落としについての実用的な問題ですので、カーネーション栽培の専門の方か園芸関係の方にお尋ねになるのがよろしいかと思いますが、折角の機会ですので植物学的見地からの事柄を紹介することにいたします。
 まず、木質化について簡単に説明いたします。木質化とはリグニンが蓄積することです。木本植物の茎、枝には一般的な現象ですが、草本でもカーネーション、ハーブ類、ナス、トマトなどで成長が進むと、茎の基部が木質化するものがあります。リグニンはベンゼン環(炭素6個)にプロパン側鎖(炭素3個)が付いたフェニルプロパノイドという化合物のポリマー(重合体)で、いわゆるポリフェノールの一種です。植物細胞では2次細胞壁の成分として特に木部で成長と共に細胞層(スクレレンキマ)に蓄積して硬い細胞壁を作り、茎に機械的な強度を与えます。また、木質化することによって、多くの農作物の根腐病、萎凋病、萎黄病などを引き起こす糸状菌、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)のようなカビの感染を防ぐ役割をします。
 次に、切り落とし(剪定)によって新芽が伸び始めるメカニズムについて説明します。上部を切り落として残った茎からの芽吹きは、茎の組織に新しく芽(不定芽)が作られるのではありません。既に作られて、いわば休んでいた芽(休眠芽)が成長を始めるのです。それはどこにあるかというと、茎に見られる節にあります。節は葉の付け根だったところで、小さな膨らみです。茎には植物種によって一定の順序で葉が付きます(葉序)。葉は茎の先端の茎頂で原基がつくられ、茎頂の下の区域の細胞の伸長で茎が伸びるに従って大きくなっていきます。葉と次の葉の間は節間と呼ばれ、茎は節間で区切られています。茎とこれらの葉(葉柄)付け根の上側に腋芽(側芽)が形成されます。この腋芽が成長すると枝になります。
 ではなぜこれらの芽が成長しないで残っているのかというと、通常「頂芽優位(勢)」と言う現象によって腋芽は休眠したままでいます。つまり、頂芽が活発に成長を続けている限り、腋芽の成長開始は抑えられているのです。これは頂芽(茎頂)で合成される植物ホルモンのオーキシンが下方へ輸送されて腋芽の成長を抑制するからです。オーキシンは特に細胞の伸長などを促進する重要な成長ホルモンですが、芽の成長は抑えるように働きます。したがって 茎の先端(頂芽)を除去すると腋芽は抑制が解除されて成長を開始できます。切り落とし(剪定)と言う作業は、要するに頂芽優勢の縛りを外してやることです。植物種によって頂芽優勢の強弱はあります。庭木の剪定をして樹形を整えるのはこの原理に基づいています。
 木質化が起きている茎の部分はすでに葉は脱落してしまっているかもしれません、そして腋芽は木質で覆われて埋もれたようになっている場合もあると思います。樹木の幹には多くみられ、このような芽は「潜伏芽」と呼ばれます。樹木の幹の基部の方から新梢が出てくることがありますが、これは「胴吹き」呼んでいます。
 カーネーションの場合にも、個体によっては木質化した部分にも腋芽はあると思います。膨らみを目安に調べてみてください。
 Netで調べて見ましたが、カーネーションの切り落としに関する情報はかなりたくさん掲載されています。具体的にはそれらの情報を参考にすることをお勧めします。「カーネーション茎の木質化」、「カーネーションの切り落とし」等々の用語で検索してみてください。
 なお、上記説明に関連して、腋芽、頂芽優勢(優位)、オーキシン、休眠芽、潜伏芽、不定芽、葉序などなどの専門用語は、本Q&Aコーナーで検索していただくと多くの関連質問/回答が収録されていますので、そちらをお読みください。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2026-03-12