質問者:
中学生
慧大
登録番号0656
登録日:2006-05-11
植物(木)は、どうやって水を高い所まで吸い上げる事ができるのですか?質問させて下さい!
・ストローで吸い上げると最高10mが限界。
・木の中には20mをこすものもある。
ならどうやって植物は、水を高い所まで吸い上げる事ができるのですか?
3つのポイントがあるそうです!なるべく詳しく教えて下さい!
宜しくお願いします!!
慧大 くん:
大きな樹木の頂上まで水が上昇することは本当に不思議ですね。ご質問の様子から想像するとどうも学校の課題研究の匂いがたいへん強いですね。でも、この水上昇の問題は研究者の間でもかなり難しい問題で、容易に単純化できない内容なのです。一般にも広く関心の高い問題ですのでこれを機会に、このコーナーにしては長い説明になりますが回答します。よく読んで理解してください。
大木の頂上まで水上昇が可能な条件が幾つかありますので順に説明します。
1.水は根で吸収され導管まで運ばれます。このとき根の細胞は吸収された水で圧力が高まっています。これを根圧と言います。そのため根は導管内の水を上に押し上げようとする力を生じています。でもその力は大きなものではありません。
2.植物の茎や葉で水が通る場所は導管という管状の構造です。樹木では材となっているところにたくさんあります。この管はとても細く毛細管(直径が1/200から1/6mm)になっています。毛細管現象(毛管現象)ということをご存じだと思いますが、毛細管を水の中に差し込むと吸い込まないのに管の中に水が昇ってきます。これは水の表面張力という力によるもので、管が細いほど高く水は昇ります。しかし、この毛細管現象だけでは数十メートルにもなる樹木の水上昇を説明できません。
3.水には凝集力という力があります。水のように小さな分子(分子量はわずかに18です)が常温、1気圧で液体であることは大変珍しいことなのです。酸素は分子量32で、水分子より大きいのに気体ですね。これは水の分子は棒磁石のようにプラス極とマイナス極に分かれていて、1つの水分子のプラス極と別の水分子のマイナス極とが引き合い、分子間に強い静電的引力が働いています。ですから水の分子はお互いに近くにあり液体になるのです。この水分子が静電的に引き合う力が凝集力で、導管のような毛細管内では200気圧位の力があるとされています。
4.植物の葉には気孔といって小さな孔がたくさんあります。この孔から光合成に必要な二酸化炭素を吸収し、できた酸素を排出しています。同時に、気孔から水が絶えず蒸発しています。蒸散という作用です。蒸散作用は導管内の水柱を引き上げようと働くはずです。
さて、種子が発芽して小さな幼植物のときでも上に述べた条件は同じで、根で吸収された水は導管に入り、根圧で少しは押し上げられます。幼植物は小さいので毛細管現象だけでも導管の中の水は問題なく上部の葉まで連続して到達しますが、成長して大木になると毛細管現象だけでは説明できません。水の凝集力は毛細管である導管内では大きいため、大木でも根から頂上まで水を連続した水柱とすることができます。昼間は上部にある葉の気孔の蒸散作用で水を絶えず引き上げる力が働くため、水は導管内を切れることなく上昇すると考えられます。この説明を「水の凝集力説」として100年近く前に提唱され、それ以来信じられてきたものです。ところが蒸散作用で導管内が陰圧(大気圧より低い圧力)にならなければ水は上昇しませんが、実際に導管内の圧力を測定することができなかったため凝集力説は「証明された」ものでなく「推論」でしかなかったのです。最近(といっても1995年のことですが)アメリカの2つの研究グループが実際に導管内の圧力を測定しマイナス5からマイナス35気圧になっていることを示して凝集力説は証明されたと思われました。しかし、この値は数十メートル以上の樹木の水上昇を説明するためには十分ではないとして、さらに別の力が関係しているとの意見もあります。また、導管内に気泡ができたり消えたりする現象も観察され、水の凝集力説だけで完全に解明された課題とは言えないのが現状です。
大きな樹木の頂上まで水が上昇することは本当に不思議ですね。ご質問の様子から想像するとどうも学校の課題研究の匂いがたいへん強いですね。でも、この水上昇の問題は研究者の間でもかなり難しい問題で、容易に単純化できない内容なのです。一般にも広く関心の高い問題ですのでこれを機会に、このコーナーにしては長い説明になりますが回答します。よく読んで理解してください。
大木の頂上まで水上昇が可能な条件が幾つかありますので順に説明します。
1.水は根で吸収され導管まで運ばれます。このとき根の細胞は吸収された水で圧力が高まっています。これを根圧と言います。そのため根は導管内の水を上に押し上げようとする力を生じています。でもその力は大きなものではありません。
2.植物の茎や葉で水が通る場所は導管という管状の構造です。樹木では材となっているところにたくさんあります。この管はとても細く毛細管(直径が1/200から1/6mm)になっています。毛細管現象(毛管現象)ということをご存じだと思いますが、毛細管を水の中に差し込むと吸い込まないのに管の中に水が昇ってきます。これは水の表面張力という力によるもので、管が細いほど高く水は昇ります。しかし、この毛細管現象だけでは数十メートルにもなる樹木の水上昇を説明できません。
3.水には凝集力という力があります。水のように小さな分子(分子量はわずかに18です)が常温、1気圧で液体であることは大変珍しいことなのです。酸素は分子量32で、水分子より大きいのに気体ですね。これは水の分子は棒磁石のようにプラス極とマイナス極に分かれていて、1つの水分子のプラス極と別の水分子のマイナス極とが引き合い、分子間に強い静電的引力が働いています。ですから水の分子はお互いに近くにあり液体になるのです。この水分子が静電的に引き合う力が凝集力で、導管のような毛細管内では200気圧位の力があるとされています。
4.植物の葉には気孔といって小さな孔がたくさんあります。この孔から光合成に必要な二酸化炭素を吸収し、できた酸素を排出しています。同時に、気孔から水が絶えず蒸発しています。蒸散という作用です。蒸散作用は導管内の水柱を引き上げようと働くはずです。
さて、種子が発芽して小さな幼植物のときでも上に述べた条件は同じで、根で吸収された水は導管に入り、根圧で少しは押し上げられます。幼植物は小さいので毛細管現象だけでも導管の中の水は問題なく上部の葉まで連続して到達しますが、成長して大木になると毛細管現象だけでは説明できません。水の凝集力は毛細管である導管内では大きいため、大木でも根から頂上まで水を連続した水柱とすることができます。昼間は上部にある葉の気孔の蒸散作用で水を絶えず引き上げる力が働くため、水は導管内を切れることなく上昇すると考えられます。この説明を「水の凝集力説」として100年近く前に提唱され、それ以来信じられてきたものです。ところが蒸散作用で導管内が陰圧(大気圧より低い圧力)にならなければ水は上昇しませんが、実際に導管内の圧力を測定することができなかったため凝集力説は「証明された」ものでなく「推論」でしかなかったのです。最近(といっても1995年のことですが)アメリカの2つの研究グループが実際に導管内の圧力を測定しマイナス5からマイナス35気圧になっていることを示して凝集力説は証明されたと思われました。しかし、この値は数十メートル以上の樹木の水上昇を説明するためには十分ではないとして、さらに別の力が関係しているとの意見もあります。また、導管内に気泡ができたり消えたりする現象も観察され、水の凝集力説だけで完全に解明された課題とは言えないのが現状です。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2007-11-08
今関 英雅
回答日:2007-11-08