一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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桜の花弁の数について

質問者:   会社員   村上孝史
登録番号0675   登録日:2006-05-16
桜は,同じ木でも異なった花弁が咲くと聞きましたが,このようなことはあるのでしょうか。あるとしたら原因は何でしょうか。
村上孝史さま

 お待たせしました。頂いたご質問の回答を東京大学の塚谷裕一先生にお願いしておりました所、以下のような回頭をお寄せ下さいました。ご参考になると思いますので、讀んで下さい。


村上さん
 花弁の数の決まり方についてのご質問と理解して、お答えします。
 一つの花につく花弁の数は、モクレンやツバキのようにあまりきっちり決まっていないものから、菜の花のように4枚ときっちり決まったものまで、植物のグループによっていろいろです。そんな中で、桜はバラ科ですので、基本数としては5枚に決まっています。バラ科のものとしては他に、ヤマブキ、モモ、ウメ、ノイバラ、ハマナス、オランダイチゴなど、たくさんの身近な植物があります。これらはすべて、原種の場合は花弁が5枚です。
 ですが園芸植物の場合は、桜に限らず、花弁が大きいか数が多いほど華やかになるため、自然とそういう系統が選ばれがちです。桜も、野生種のエドヒガンザクラやオオシマザクラ、フジザクラなど原種の場合は、ほぼ確実に5枚の花弁を付けますが、園芸系統のいわゆるサトザクラの八重咲きの系統の中には、百枚を超える花弁を付けるものもあります。同じことは、先ほど紹介したヤマブキ、モモ、ウメ、バラなど全てにありますね。八重の山吹は歌に詠まれているほどですし、桃も梅も八重が好まれます。バラも、切り花で流通しているのは、交配を繰り返して八重咲きになったものばかりとなっています。あるいはそこまで変化せずに、5-7枚の間でいろいろな数の花弁を付けるものもあります。ご質問のものは、そうしたもののことでしょうか。
 こういう変化は、遺伝的なものです。原型の花では、花弁を作る領域を遺伝的に決定すると共に、そこに何枚の花弁を作るかが決められるわけですが、その領域が普通より広く設定されると、より多くの花弁が作られます。あるいは、花弁を作る領域を何度も繰り返し設定すると、いわゆる八重咲きとなるわけです。こうしたものは、いずれにせよ本来の、きっちりと決まった遺伝的な仕組みが突然変異で異常となったものですから、システムがあまり正確ではありません。そのため、同じ個体、同じ枝の中でも、花ごとに違った結果になりがちです。同じ木でも異なった花弁の数となるのは、こういう理由からです。
 なお、梅や桃で知られるいわゆる「源平咲き」のように、花の色が枝ごとに違って咲くのは、これとはまた別の理由からです。もしこちらに関する質問でしたら、また改めてお尋ね下さい。

塚谷 裕一(東京大学・院・理学系研究科) 
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2006-05-31
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