一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ブロッコリーの発芽直後のアントシアン生成について

質問者:   その他   山村友宏
登録番号0693   登録日:2006-05-21
お世話になります。

ブロッコリーの新芽を生産しています。葉の緑化が始まるころ、季節によって、葉縁や葉の付け根が黒ずみ、根が褐変することがあります。
前者については、お酢に漬けてみると、それらが赤くなるので、アントシアンだと推測しています。根は色の変化がありません。
アントシアンは、低温時等のストレスに応じて生成量が増えるようですが、その他のストレス(高温、乾燥、pH、高エチレン濃度?)で増えることはありますか?
根が褐変するのも、アントシアンの酸化沈着と理解していますが、いかがでしょうか。また、そうであれば、褐変の原因にはどういうことが考えられるでしょうか?
山村 友宏 様

 新緑の頃、幾つかの木本植物が赤色の新芽を出しています。例えば垣根によく植えられるウバメガシは4-5月の間、新芽は赤色に見えますがこれらはアントシアニンによるものです。葉が成長して大きくなる6月頃に赤色は消え、葉は緑色になります。アントシアニンは主に葉の表皮細胞に分布し、表皮細胞の下にある柵状組織や海綿状組織にある(緑色の)光合成を行う葉緑体を紫外線や強い(太陽)光から守っていると考えられています。6月頃になって葉緑体が紫外線を防ぐことができ、太陽光に対する備えが充分できると、アントシアンニンは消え、緑色の葉になります。
 ご質問のブロッコリーの芽生えの葉が鮮やかでなくやや黒ずんだ状態になるのは、恐らく酢のテストもされている様にアントシアニンがたまっているためと思われます。アントシアニンは紫外線をよく吸収するため表皮細胞にあるアントシアニンがこれを吸収し、葉緑体を傷めないようにしている役割、一種の日焼け止めクリームの役割をもっています。さらに、アントシアニンは光合成に利用される可視光も一部吸収しますが、光合成によるCO2固定に必要とする以上の強さの太陽光を浴びると、過剰の太陽光は葉緑体に光障害を与える様になります。そのため、日傘や日焼け止めクリームをもっていない植物はアントシアニンによって、太陽光による障害を防ぐようにしていると思われます。ブロッコリーの芽生えのアントシアニンはある程度遮光すれば防ぐことができるかも知れません。
 低温になると光合成によるCO2固定が低下し、同じ太陽光の強さでも光過剰になりやすく、これを防ぐためにブロッコリーの葉はアントシアニンを合成し、調節していると思われます。この他に乾燥(水ストレス)や土壌の適当でないpH、土壌の肥料成分のアンバランスなどもCO2固定を低下させ、そのため光過剰になりやすくなる、すなわち、アントシアニンの合成が促進される原因になるでしょう。エチレンがアントシアニン合成に直接、影響する例はないようですが、高濃度で間接的にCO2固定を抑制するようであれば合成を促進するかも知れません。
 根が褐変するのはアントシアニンによるよりは他の原因、pH など土壌条件が適当でない、通気性が低いなどがアントシアニンと直接に関係のない原因が考えられますが、ご質問の現象の原因が何であるかを推定するのは困難です。しかし、根が褐変するのはポリフェノールの重合によって生じることが多く、根の機能が低下しているように思われます。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2006-05-29
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