一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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植物の塩化ナトリウムによる影響について

質問者:   大学生   クリハラ
登録番号0704   登録日:2006-05-24
こんにちは。クリハラです。

植物にとって土壌中の塩化ナトリウム(塩類)は吸水・生育障害になり、それを軽減するものとして塩化カルシウム(置換型カルシウム)が効果がある。と教わりました。
しかし塩化カルシウムがどのように効果を発揮するのかが分かりません。
(なぜ塩化ナトリウムの影響を軽減するのか)

興味のある分野なので是非よろしくお願いします。
クリハラ様

みんなの広場への質問、ありがとうございました。
植物の無機栄養研究者の立場から、土壌、植物、環境について研究をされている、京都大学農学研究科の間藤徹先生にお願いしたところ、以下の回答をお寄せ下さいました。



土壌中に過剰の塩があると植物の生育は阻害されます。

これを一般に塩害と呼びます 多くの場合、塩害は土壌に塩化ナトリウムが多量に存在することでおこります その障害の機構は、塩化ナトリウムの濃度がたかいために浸透圧が高く吸水が出来ない、また、イオンが高濃度で存在するため細胞のイオン濃度も上昇しいろいろな酵素反応が阻害されるためと考えられます。 

実際の土壌に接する植物の根では以上の原則以外にもさまざまな現象が起こっています。

根の細胞壁ではカルシウムイオンがペクチン質多糖に結合していますが、土壌のナトリウムイオン濃度がたかくなると、ペクチン質多糖にカルシウムイオンが結合することが妨害されます このため細胞壁が弱くなると推定されます。

また、土壌中のナトリウムイオン濃度が高いと粘土鉱物にナトリウムイオンが結合し、カルシウムイオンを追い出します その結果、土壌粘土鉱物は分散しやすくなり、カルシウムイオンが結合していたときよりも土が硬くコンパクトになります。

ナトリウムイオンが過剰になると植物細胞壁や土壌粘土鉱物からカルシウムイオンを追い出して植物の生育を阻害します。これはナトリウムイオンとカルシウムイオンの大きさが似ていること、これらのイオンはどちらも環境中での存在濃度が高いこと、によっています。

このため、ナトリウムイオンが過剰にあるときには土壌にカルシウムイオンを補うと、土壌を(相対的に)ふわふわにして植物細胞壁を健全に保ち、その結果、塩害を軽減するのだろうと推察されています。

間藤 徹(京都大学農学研究科)
日本植物生理学会広報委員、京都大学
河内 孝之
回答日:2006-05-31
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