一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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花粉の保存について

質問者:   大学生   鈴木
登録番号0730   登録日:2006-06-03
花粉(モチノキ・タラヨウ)の保存方法についての質問です。

花粉を採取後(乾燥処理なし)、冷蔵庫内(4℃)で一度保存しました。
その花粉を一度、1mMショ糖寒天培地・20℃で培養してみましたが発芽しませんでした。
心配で一度冷蔵庫から取り出し、今現在、シリカゲルにかけ乾燥させています。

一度も乾燥させずに冷蔵庫保存(長いので約1ヶ月間)したのちに、再び取り出して乾燥させても花粉の発芽能は大丈夫なのでしょうか?

ご教授いただけたら幸いです。よろしくお願いいたします。
鈴木様

花粉の貯蔵に関する下記質問にお答えします。

回答:一般に花粉の発芽力は温度、湿度、気相など外界の条件によって影響を受け易いのですが、植物の種類によっても著しい差があります。10年経っても発芽した例がありますし、イネのように数時間というきわめて短い植物もあります。たいていは数日から数十日が寿命のようです。
一般に、採取した花粉を室温でそのまま放置するよりは、低温で乾燥状態に置くほうが発芽力の低下は抑えられるでしょう。あなたが実験に使っている、モチノキ、タラヨウの花粉の性質についての文献は知りません。しかし、どの花粉にも同じようにすれば長く寿命を保つという方法はないと思ってください。
花粉を何かの実験に供されるのでしたら、まず材料としての基礎的データをとっておくことです。すなわち、採取した花粉を、温度、湿度、酸素(気相)などの条件を変えて保存し、一定時間(日数)毎に取り出して、一定条件で発芽試験をしておくことが必要でしょう。また、採取時期によって発芽力に違いがあるかを調べておくことも大切でしょう。あなたは大学生ということですから、実験は基礎的なデータをしっかりとつかんでおくことが大切なことはお分かりでしょう。
花粉の貯蔵に関する文献で新しいものは知りませんが、安田貞雄著『高等植物の生殖生理学」養賢堂には『花粉の貯蔵及び輸送』という項目があり、17頁にわたって詳細に書かれています。この本は絶版なので書店では入手できませんが、大学の図書館にはあると思います。参考にして下さい。日本語で書かれたものとしてはおそらくこれが一番詳しいと思います。

以上のことから、おたずねの花粉の発芽能力は大丈夫かどうかは全くわかりません。試験してみるのが、一番手っ取り早いでしょう。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2006-06-06
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