一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物細胞の若い細胞と老成した細胞の相違点

質問者:   その他   みなみ
登録番号0739   登録日:2006-06-05
↑のような課題を宿題で出されたのですが、詳しい資料が見つからなかったので、質問させて頂きました。
それから、タイトルとはちがうのですが、別件で、なぜ、植物細胞は中心体がなくても紡錘体を形成することができるのですか?
また、なぜ、動物細胞では、液胞が発達していないのですか?
この3つの質問にお答えくださると大変助かります。
どうぞよろしくお願いします。
みなみ様

 みんなの広場へのご質問ありがとうございました。質問は3つと思いますが、まずはタイトルの質問から始めましょう。植物細胞の特徴の一つに細胞壁を持っていることがありますが、若い細胞と年とった細胞では細胞壁に違いがあります。若い細胞では細胞壁は薄く伸び易く、従って若い細胞は大きくなることが出来ますが、年とった細胞では細胞壁は厚く伸びにくく、従って年とった細胞はもう大きくなれません。植物細胞の特徴のもう一つは液胞を持っていることですが、若い細胞と年とった細胞では液胞にも違いがありまます。若い細胞では液胞は発達しておらず、普通の光学顕微鏡ではほとんど観察出来ませんが、年とった細胞では液胞が発達しており、細胞の中の生きている部分(原形質)は細胞壁にへばりつくように存在しているだけで、細胞の中身のほとんどが液胞です。また液胞が多きくなるにつれて、細胞も大きくなりますので、年とった細胞の体積は若い細胞の体積の50倍くらいになったりもします。もう一つ細胞分裂の能力にも違いがあります。若い細胞は細胞分裂をする能力がありますが、年とった細胞ではその能力が低下しており、ほとんど分裂をしません。
 2番目の質問に行きましょう。紡錘体は紡錘糸と呼ばれる糸(電子顕微鏡で観察すると細い管)で出来ています。動物細胞では紡錘糸が中心体から伸びているので紡錘体は両端が尖った文字どおりの紡錘形をしています。中心体を電子顕微鏡で観察すると、その中心に一対の短い棒状のもの(中心子)があり、その周りを形のはっきりしない物が取り囲んでいるのが分かります。実は、紡錘糸を伸ばしているのは中心子ではなくその周りの、形のはっきりしないものなのです。言い換えると、紡錘糸を伸ばすものが中心子の所に集まっていると言うことなのです。そこで植物細胞ですが、中心子がありませんので中心体は出来ませんが、紡錘糸を伸ばすことのできる物はあるのです。中心子がないので、この物は一カ所に集まることが出来ず、すこし拡がって存在すると考えられます。その結果、植物細胞でも紡錘体は紡錘体と呼ばれていますが、両端の尖った紡錘形はしておらず、樽のような形になっています。
 最後の質問です。私達を含め動物は要らなくなった物を排泄することが出来ますが、植物はそれが出来ません。植物は要らなくなった物をどうしているのかと言うと、液胞の中に棄てているのです。動物細胞では要らなくなった物を細胞の外に吐き出します。細胞の外に吐き出された要らなくなったものは、最終的には体の外に排泄されるのです。一生、生えている所から動くことのない植物では要らなくなった物を体の中に溜込んでいても大丈夫でしょうが、動き回る動物が要らなくなったものを体の中に溜込んでいなければならないとしたら、大変ですよね。液胞に関係した質問は幾つか頂いていて(登録番号0619, 登録番号0696)回答がみんなの広場に載っていますので、讀んでみて下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2006-06-06