一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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アレロパシーの実験法について

質問者:   その他   松田和樹
登録番号0076   登録日:2004-05-30
私は、大学校に通っているのですが、個人的にアレロパシーについて興味を持ち、実験してみたいと思っているのですが、プラントボックス法や、サンドイッチ法はどのように行うのでしょうか。
また、支持材料に寒天とあるのですが、私が趣味の組織培養で使っているゲランガムなどは使用できないのでしょうか?
また、簡便な実験法などありましたら教えてください。

よろしくお願いします。
松田 和樹さま

サンドイッチ法、プラントボックス法の詳しい説明は

農産漁村文化協会 自然と科学技術シリーズ
「アレロパシー 他感物質の作用と利用」
藤井義晴 著
ISBN4-540-92225-4
p.189 - p.179
に載っています。

サンドイッチ法は、枯葉からの他感物質の放出を検出するための方法です。
6穴の組織培養用マルチディッシュなどに自然に落ちた、できるだけ新鮮な枯葉を入れ、オートクレーブ滅菌後45℃に冷ました寒天5 mlを加えて、葉を浮かせた状態で寒天をゲル化させます。その後、さらに5 mlの寒天を加えて葉をサンドイッチ状に寒天ゲルの中に埋め込みます。枯葉を入れる量は、実際の落葉量を参考に、50 mg / 10 cm^2/ 10mlとしています。寒天ゲル上に検定植物のタネをまき、その生育の状況を枯葉を加えなかったコントロールと比較し、阻害効果の有無を調べる、というものです。原報では、寒天濃度は0.5%、検定植物としてはレタス(GreatLakes 366)を用い、各穴に5粒をまき、25℃暗黒下で2日半培養し、幼根、胚軸の長さを測定しています。コントロール、枯葉入り、いずれも何組か実験を行うことをお勧めします。

プラントボックス法は、生きた植物の根から他感物質が放出されているか調べる方法です。他感物質を放出しているかどうか調べたい植物の根を、セルロース透析膜またはナイロンメッシュを張った筒(直径32mm)に入れ、組織培養用プラントボックス(60 mm x 60 mm x 100 mm)の片隅に置き、オートクレーブ後40℃から45℃に冷ましておいた寒天を注ぎ、氷水で急冷してゲル化させます。寒天上の10 mm間隔の格子点に検定植物(レタス、GreatLakes 366)の種子を埋め込むように播き、5日間培養します。レタス芽生えの幼根長、胚軸長を(タネをまいた場所との対応が分かるように気をつけて)測定し、他感物質を放出しているかもしれない植物からの距離(膜からの距離)に対して測定値をプロットし、回帰直線を求め、距離=0における推定値を求めます。比較のために、植物なしでも同様の実験を行い、距離=0における推定値を求めます。この二つの値を比較することで、阻害効果の有無、程度を評価します。原報では、あらかじめ砂またはパーライトに播種し、1から3ヶ月栽培した植物を試験に用いています。根の乾燥重量100 mgから500 mgが適当、とのことですが、直径32mmの円筒に収まる量、ということでおよその検討はつくでしょう。また、培養は植物が枯れるのを防ぐため、暗黒下という訳にはいきません。通常の明暗周期か、連続光照射下になります。

支持材料としては、種々検討の結果、0.5%程度の寒天を選んでおります。生育、透明度、強度、吸着の有無、などから寒天が最適、との評価ですが、ゲランガムについては言及されておりませんが、おそらく使用できると思います。
一度予備試験を行ってみて下さい。

その他簡便な方法としては、植物体からの水抽出液を作り(5 gの植物組織を50 mlの純水に浸して24h、撹拌するなど)、それに浸したろ紙上で検定植物の種子の発芽、成長を調べることもできます。
奈良女子大学
酒井 敦
回答日:2007-07-27
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