一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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pHによる花の色変化

質問者:   会社員   あゆみ
登録番号0779   登録日:2006-06-13
なぜpHが変化すると花の色が変わるのですか?
詳しく教えてください。
あゆみ様

下記質問について専門の方に回答をお願いしておりましたが、すぐ回答をいただく分けにいかなくなりましたので、とりあえず、十分に説明できるかどうか分かませんが、私から回答いたします。
詳しく説明してほしいとのことですが、どこまで専門的な説明にして良いかわかりませんので、高校レベルを念頭におきました。それ以上のレベルをもとめられる場合は専門書をおよみください。

質問(登録番号0779):なぜpHが変化すると花の色が変わるのですか? 詳しく教えてください。

回答:花の色がpHで変化するのは花に含まれる色素の呈色反応がpHの影響を受けることを示しています。一般にpHによって変色する物質には多くの種類があり、一番有名なのはアルカリで赤色を示すphenolphtaleinでしょう。200種類以上の色素がpH指示薬としての性質を示すことが知られています。それぞれの色素はある決まったpHの領域でのみ変色します。例えば、methyl red はpH4.4 ~ 6.3 の間で赤から黄色に変りますし、cresol redはpH7.0 ~ 8.8 の間で黄色から赤色に変わります。
花の色素にはフラボノイド系、カロテノイド系、ベタレイン系及びクロロプィルの4種類のグループがあります。厄介なのは、これらの色素が単独で存在するする場合もありますが、複数様々な濃度で組合わさって呈色していることもあります。従って花の色の変化はただ単にpHが変わっただけでは説明できないことの方が多い様です。ただ、アジサイの花の色の変化が細胞内のpHの変化の影響を受けていることが最近の研究で明らかにされました。

花の色素がpHで変化するのは、化学的にはpH指示薬の色がpHで変化するのと同様なメカニズムによると考えていいでしょう。指示薬の変色につては分子の電離(解離)と関係があるようです。例えばある弱酸の色素分子(HA)が水溶液中ではプロトン(H+)とマイナスイオン(A-, 強塩基)に解離しています。この場合、非解離のHA分子と解離したA-分子とでは吸収スペクトルが異なるので、その解離度の程度(pHの影響を受ける)によって呈色に変化が生じるというものです。また、Hの分子内転移が先におこり、最終的に解離が起きるという考えもあります。この場合は分子内転移が起った状態で吸収スペクトルに変化が起きるといわれています。
いずれにしても、pHの変化により色素分子内に変化がおこり、そのため吸収スケクトルにも変化が起きるのが変色の原因といってよいでしょう。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2006-06-23
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