一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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木部

質問者:   その他   鈴木
登録番号0794   登録日:2006-06-18
なんで「木部」というのですか?
鈴木 さん:

ご質問の意味が良く分からないのですが。単に「木」でなく「木部」というのはどうしてかということでしょうか。日本語の約束事といってしまえばそれまでですが「木部(材)」という植物学用語がありますのでその説明を回答の代えます。

植物の茎、根、葉には根で吸収した栄養分を含む水や、葉で合成した糖類やその他の代謝物が溶けた水を通す管状の組織がありこれを通導組織と呼んでいます。被子植物の茎の通導組織を詳しく観察すると、根で吸収した水を運ぶ管は厚い木質化した細胞壁に囲まれ、死んだ細胞が上下につながったもので導管と呼びます。その外側にやはり長い管状細胞が上下に並んでいます。この細胞の特徴は上下細胞の境に篩のように孔の開いた細胞壁があって上下の通導を担っていること、最後まで生きていることです。この部分を篩部(篩管部)と言います。導管形成の最初は導管要素という生きている長い細胞が縦に並んでできます。次第に導管要素の細胞壁は厚くなって細胞が死にはじめると上下に接している細胞壁部分もなくなって縦に長い管(導管)が完成するわけです。導管要素や導管は数本が束になっていて、この部分を植物学の言葉として「木部(もくぶ)」と呼んでいます(約束事です)裸子植物では少し様子が違い導管要素に相当する細胞は横に丸いさまざまな形の孔が開いている仮導管と言われる細胞です。細胞壁が厚くなって細胞は死にますが上下の境になる細胞壁はなくならず、水は横の孔を介して通ります。
木本植物(樹木)では、篩部と木部の間に形成層という常に細胞分裂を繰り返す若い細胞層が作られ、この形成層が内側に導管(木部)を外側に篩部を二次的に形成しますので木部は毎年蓄積されます。そのため茎が太くなる肥大成長がおこるわけです。
外側に作られた篩部は古いものが樹皮の表面から剥がれおちますので篩部の厚さはそれほど増加しません。木部の細胞壁にはリグニンという物質が蓄積して物理的に丈夫な材(木材)となります。簡単に言えば導管部を木部と言っていることになります。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2006-06-23
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