質問者:
その他
大塚 浩二
登録番号0803
登録日:2006-06-21
トマチンはトマトのどの辺にどのくらい分布しているものなのでしょうか?トマチン
一番多く含まれるのは果実でしょうか?
教えてください。
大塚 浩二 様
トマトに含まれるトマチンは、ジャガイモを貯蔵している間に塊茎から芽が出たときその芽の中に含まれるソラニンと、似た構造をもつアルカロイド配糖体です。
トマチンとソラニンは共に多量摂取するとヒトに毒性がありますが、最近、トマチンは昆虫の嫌いな(忌避)成分であることがわかり、植物は虫に食べられないようにするためにトマチンを合成しているようです(高知大・農・堀池博士)。
トマトの代謝産物を、網羅的に全て(メタボロミクス)解析されておられる、かずさDNA研究所・植物ゲノム応用部長・バイオ共同開発センター長の柴田 大輔博士から、トマチンがトマト植物のどの部位に多いか、トマト果実の生育段階での含量の変化、トマチンの毒性について詳しい解説を頂きましたのでご覧下さい。
トマチンのトマト植物での含量は、組織や生育時期ごとに異なります。
花、葉、茎に多く、根や未熟果実ではそれよりも少なく、完熟果実ではかなり少なくなります。トマチン含量の測定値は、トマトの種類などによっても異なりますが、報告されている測定例を次に示します。
花(1100 mg/kg)
葉(975 mg/kg)
茎(896 mg/kg)
未熟果実(465 mg/kg)
熟した青い果実(48 mg/kg)
完熟果実(0.4 mg/kg)
この様にトマトの果実が熟して、食べられる状態になるとトマチンの量が急激に減少します。
トマチンの毒性は、マウスの腹腔内に投与したときの半致死量(LD50)が32 mg/kgであり、これを単純に50 kgのヒトに換算すると、半致死量は1600 mg(1.6 g)になります(マウスとヒトで効果が同じかどうかはわかりませんが)。この量は完熟果実では、4000 kg (4 トン!)、熟した青い果実では、33 kg、未熟果実では3.4 kg、に相当します。中ぐらいの大きさのトマトは約100 gですから、未熟果実でも34個を一挙に食べないと半致死量には達しません。通常、そのような場合は考えられません。
毒性と生体機能活性は紙一重であり、最近では毒性よりもトマチンの抗腫瘍活性、LDLコレステロール低下効果など、逆に良い効果についての報告があります。
トマトに限らず、普通に食べている食品でも、毒性が全くゼロということはありません。そのため、特定の食品や成分だけを大量に摂取するとその毒性の面が顕著になるようになってきます。バランスよく食べることが大切ですね。
柴田 大輔(かずさDNA研究所植物ゲノム応用部長バイオ共同研究開発センター長)
トマトに含まれるトマチンは、ジャガイモを貯蔵している間に塊茎から芽が出たときその芽の中に含まれるソラニンと、似た構造をもつアルカロイド配糖体です。
トマチンとソラニンは共に多量摂取するとヒトに毒性がありますが、最近、トマチンは昆虫の嫌いな(忌避)成分であることがわかり、植物は虫に食べられないようにするためにトマチンを合成しているようです(高知大・農・堀池博士)。
トマトの代謝産物を、網羅的に全て(メタボロミクス)解析されておられる、かずさDNA研究所・植物ゲノム応用部長・バイオ共同開発センター長の柴田 大輔博士から、トマチンがトマト植物のどの部位に多いか、トマト果実の生育段階での含量の変化、トマチンの毒性について詳しい解説を頂きましたのでご覧下さい。
トマチンのトマト植物での含量は、組織や生育時期ごとに異なります。
花、葉、茎に多く、根や未熟果実ではそれよりも少なく、完熟果実ではかなり少なくなります。トマチン含量の測定値は、トマトの種類などによっても異なりますが、報告されている測定例を次に示します。
花(1100 mg/kg)
葉(975 mg/kg)
茎(896 mg/kg)
未熟果実(465 mg/kg)
熟した青い果実(48 mg/kg)
完熟果実(0.4 mg/kg)
この様にトマトの果実が熟して、食べられる状態になるとトマチンの量が急激に減少します。
トマチンの毒性は、マウスの腹腔内に投与したときの半致死量(LD50)が32 mg/kgであり、これを単純に50 kgのヒトに換算すると、半致死量は1600 mg(1.6 g)になります(マウスとヒトで効果が同じかどうかはわかりませんが)。この量は完熟果実では、4000 kg (4 トン!)、熟した青い果実では、33 kg、未熟果実では3.4 kg、に相当します。中ぐらいの大きさのトマトは約100 gですから、未熟果実でも34個を一挙に食べないと半致死量には達しません。通常、そのような場合は考えられません。
毒性と生体機能活性は紙一重であり、最近では毒性よりもトマチンの抗腫瘍活性、LDLコレステロール低下効果など、逆に良い効果についての報告があります。
トマトに限らず、普通に食べている食品でも、毒性が全くゼロということはありません。そのため、特定の食品や成分だけを大量に摂取するとその毒性の面が顕著になるようになってきます。バランスよく食べることが大切ですね。
柴田 大輔(かずさDNA研究所植物ゲノム応用部長バイオ共同研究開発センター長)
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2006-07-26
浅田 浩二
回答日:2006-07-26