一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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アントシアニンの安定性と構造について

質問者:   その他   中島
登録番号0818   登録日:2006-06-26
試験管内の実験において、アントシアニンの色が、酸性下で安定な赤色を示すのに対し、アルカリ性下で示す青系の色が不安定で退色しやすいのはなぜですか。
配糖体としての構造が壊れやすくなるからですか。アルミニウムイオンなどの金属イオンとの関係があるんですか。

また、アルカリ下の青色を試験管内で安定に保つ方法があれば、お教え下さい。
中島 様

植物の花、果実や葉を彩るアントシアニン(アントシアニジンの配糖体)についてのご質問ですが、アントシアニジンはフラボノイドの1群で多数の分子種があり、その生理機能も花などの生殖器官に色を与え昆虫を呼び寄せ受粉をうまく進行させる機能、太陽光を吸収して細胞が光過剰障害を受けないようにしている機能など、多様な機能をもっています。アントシアニジンは大部分が配糖体の形、すなわちアントシアンとして存在していますが、細胞中では、液胞の中に局在しています。液胞は成熟した細胞の大部分の体積を占め、原形質や細胞小器官(葉緑体、ミトコンドリアなど)に比べそのpHが低く酸性であるのが大きな特徴です。
アントシアニンが細胞内の酸性の液胞に主として局在するため、酸性条件下で安定であるのは生物学的に必要なことと思われます(液胞でアントシアニンが簡単に分解してはその生理機能を充分に発揮できない)。しかし、なぜ、アルカリ性で不安定なのかはわかりません。細胞内でアントシアンは1分子だけが単独で存在することはなく、数分子のアントシアニジン分子の会合、それへの金属イオンの結合などによって分子間で会合した状態で存在し、これがアントシアニンの安定性と多様性にとって必要であることが明らかにされています。この様な安定であるための分子間の会合がアルカリ性でもできる方法が見つかれば大発見になるかも知れません。しかし、植物細胞で余りその必要性はないといえるでしょう。
           
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2006-06-28