一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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コナラについて

質問者:   その他   ダイスケ
登録番号0820   登録日:2006-06-27
造園の仕事をしていてふとお客さんに尋ねられたのですが答えられなかったので教えてください。

1、コナラの樹液の成分
2、コナラの土壌環境
3、コナラのどんぐりの成分

お願いします。

ダイスケ さん:

コナラと限り、しかも内容の異なった3つのご質問ですので、各質問を森林総合研究所の専門の先生方にご回答を願いました。しかし、コナラの樹液を調べた結果やドングリの成分を分析した結果は容易に見つかりませんのでかなり一般的な回答にならざるを得ませんでした。樹液に関しては登録番号0804の回答をご参照ください


1、コナラの樹液の成分
樹液は樹木の茎に傷がついたときに傷口からしみ出る液体です。樹液の成分は殆どが導管液ですのでほぼ少量のミネラルや糖類を含む水です。これに篩管液も多少混じって樹液としてしみ出るものです。新葉が出る前の樹液には糖類が多く含まれ、口に含んでも甘いと感じられる濃度です。それでも1%未満のはずです。その他に、アミノ酸やミネラル等の生きるための必須成分が入っています。しみ出た樹液は乾燥して糖濃度も高まりクワガタやカブトムシなどが好んで集まってくることになります。

丸山 温(森林総合研究所 植物生態研究領域)
田内裕之 (森林総合研究所 森林植生研究領域)

2、コナラの土壌環境
コナラはクヌギなどとともに里山の典型的な植生です。日本の里山の7割近くには褐色森林土が分布していますので、コナラは褐色森林土と考えてもよいでしょう。褐色森林土とは表土が黒褐色でその下には褐色の土層が続いている土壌です。また関東から東北にかけては、黒色の表土が30cm以上の深さをもつ黒ボク土(黒色土)が、傾斜の緩やかな斜面にみられることもあります。斜面下部のやや湿った土壌ではコナラは良く成長します。

高橋正通(森林総合研究所 立地環境研究領域)

3、コナラのどんぐりの成分
ドングリとはブナ科樹木の果実の総称、特にコナラ属、シイ属、マテバシイ属樹木の実のことです。主な成分はデンプンですが、ドングリに特徴的な成分はタンニンです。タンニンはタンパク質と結合する性質を有する水溶性ポリフェノール成分の総称で、苦み、渋み成分として知られています。緑茶にも多く含まれています。タンニンは化学構造の観点から大きく二つのグループ(加水分解型タンニンと縮合型タンニン)に分類されますが、ドングリに含まれるタンニンは主に加水分解型タンニンです。コナラ属樹木のドングリからはカスタラジン(castalagin)、ベスカラジン(vescalagin)などのエラグタンニン(加水分解型タンニンの一種)が単離同定されています。
デンプンを多く含みますが多くのドングリは強い苦みのために、タンニンを除かなければ食べることができません。例えばコナラのドングリからタンニンを除く(アク抜き)には水で12時間以上も煮沸することが必要です。一方、マテバシイ、スダジイのドングリはタンニン含有量がそれほど高くなく、苦みもたいして強くはありませんので煎ったものは食用になります。タンニンは植物にとっては防御物質であり、動物の摂食を防ぐ役割を果たしていると考えられます。秋の味覚として食用にされるクリの果実はタンニンをほとんど含んでいませんので容易に虫に食われることが日常的にも観察されています。

大原 誠資(森林総合研究所 バイオマス化学研究領域長)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2012-08-25