質問者:
自営業
博行
登録番号0823
登録日:2006-06-27
初めましてよろしくお願いいたします。みんなのひろば
1年草は何故枯れるのでしょうか?
1年草の中にはまだまだ春の気候の良い時期に種をつけて早々と枯れてしまう植物がありますが、これらの植物はどのように枯れるのでしょうか?
どちらかというとwhyではなくHowの質問です。
つまり枯死するメカニズムを知りたいと思っています。
単なる老衰なのか、その季節になると種子の有無に関わらず細胞分裂がとまるようになっているとか、あるいは自ら毒素をだして枯れてしまうのか、または種子が成熟したという信号を受け取ると、なにかしらの自殺メカニズムが発動するとか
よく考えると不思議です。教えていただけたら幸いです。
博行様
下記質問に対する回答が大変遅くなってしまいました。回答は国立遺伝学研究所の倉田のり先生に書いていただきました。
回答者自身も専門家ではありませんので、知っている範囲でお答えします。私も読んではいないのですが、http://www.wood.co.jp/bk/bk-shokubutsunoseitoshi.htm のサイトに紹介されている、「植物の生と死 、環境生物学に向けて、 江刺洋司 著、平凡社」には関連の内容も出ているようです。ご存知かもしれませんが、参考までに。
さて、1年草がどのように枯死して行くのかについての共通のメカニズムがあるかどうかはわかりませんが、草花や作物の中にも、非常に近い品種でも、中には枝代わりの中からさえ、1年草や多年草が分かれて出て来る場合があります。また中間型に位置づけられるような品種も多く存在します。イネのような作物でも、種子が実ると急速に枯死してしまう1年型と気象条件さえ整えば地下茎等で何年も自生し続ける多年型があります。
この事から推察すると、実がついたら枯れるか、新たに側芽を出して行き伸びて行くかは、かなり少数の遺伝子の働きによって決まっているように見えます。実際に1年草と多年草の差がどの遺伝子の働きによって生じているのかは、まだわかっていませんが、いくつか栽培学あるいは遺伝学的な見地から解析しようとする研究も散見されます。
ご質問は、whyよりもhowを知りたいということでしたが、実験的な証拠としては、葉や茎に蓄積された窒素源や糖などが、どこにどのくらい素早く転流されるかが一次的な要因となるようです。つまり、花が咲いて実がつくと、その時期に蓄積養分が種子に集中的に転流され、葉や茎や根は窒素源枯渇状態となり、細胞分裂も細胞の機能維持自体もできなくなり枯死して行くわけです。これが1年草です。多年草の場合は、花や種子の形成そのものが、1年草に比べて頻度が低く、種子への転流が比較的弱い状態で推移し、因果関係はわかりませんが、側芽の形成が促進されて、生き延びて行く事になります。もちろん多年性植物でも草本の場合は古い葉や根は順次枯れて、新しいものに更新されて行きますので、個別の葉や根が枯れて行く事は同じです。1年草の場合、それが急速により集中的に種子に向けて行われるため、個体の残りの部分が生存を続ける状態ではなくなるということです。いろいろな品種の成り立ちや、交配実験から考えて、どのくらい早く、どのタイミングで転流が起るか、側芽の形成能力の強弱などの、1年生、多年生に関連する性質は遺伝的にプログラムされているようです。
倉田 のり(情報・システム研究機構国立遺伝学研究所系統生物研究センター)
下記質問に対する回答が大変遅くなってしまいました。回答は国立遺伝学研究所の倉田のり先生に書いていただきました。
回答者自身も専門家ではありませんので、知っている範囲でお答えします。私も読んではいないのですが、http://www.wood.co.jp/bk/bk-shokubutsunoseitoshi.htm のサイトに紹介されている、「植物の生と死 、環境生物学に向けて、 江刺洋司 著、平凡社」には関連の内容も出ているようです。ご存知かもしれませんが、参考までに。
さて、1年草がどのように枯死して行くのかについての共通のメカニズムがあるかどうかはわかりませんが、草花や作物の中にも、非常に近い品種でも、中には枝代わりの中からさえ、1年草や多年草が分かれて出て来る場合があります。また中間型に位置づけられるような品種も多く存在します。イネのような作物でも、種子が実ると急速に枯死してしまう1年型と気象条件さえ整えば地下茎等で何年も自生し続ける多年型があります。
この事から推察すると、実がついたら枯れるか、新たに側芽を出して行き伸びて行くかは、かなり少数の遺伝子の働きによって決まっているように見えます。実際に1年草と多年草の差がどの遺伝子の働きによって生じているのかは、まだわかっていませんが、いくつか栽培学あるいは遺伝学的な見地から解析しようとする研究も散見されます。
ご質問は、whyよりもhowを知りたいということでしたが、実験的な証拠としては、葉や茎に蓄積された窒素源や糖などが、どこにどのくらい素早く転流されるかが一次的な要因となるようです。つまり、花が咲いて実がつくと、その時期に蓄積養分が種子に集中的に転流され、葉や茎や根は窒素源枯渇状態となり、細胞分裂も細胞の機能維持自体もできなくなり枯死して行くわけです。これが1年草です。多年草の場合は、花や種子の形成そのものが、1年草に比べて頻度が低く、種子への転流が比較的弱い状態で推移し、因果関係はわかりませんが、側芽の形成が促進されて、生き延びて行く事になります。もちろん多年性植物でも草本の場合は古い葉や根は順次枯れて、新しいものに更新されて行きますので、個別の葉や根が枯れて行く事は同じです。1年草の場合、それが急速により集中的に種子に向けて行われるため、個体の残りの部分が生存を続ける状態ではなくなるということです。いろいろな品種の成り立ちや、交配実験から考えて、どのくらい早く、どのタイミングで転流が起るか、側芽の形成能力の強弱などの、1年生、多年生に関連する性質は遺伝的にプログラムされているようです。
倉田 のり(情報・システム研究機構国立遺伝学研究所系統生物研究センター)
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2006-09-11
勝見 允行
回答日:2006-09-11