一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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液胞の染色について

質問者:   その他   ゆま
登録番号0864   登録日:2006-07-04
オオムギの子葉鞘を用いて『液胞の染色』をおこなっています。
ニュートラルレッドを使い染色をしているのですが、なかなかうまく液胞が染まりません。
いろいろ調べて濃度は0.7mg/mlということが載っていたのでそれで試しているのですが液胞が染まらず、細胞壁が染まってしまいます。
他にもいろいろ複雑な染色方法(このHPにも載っているような染色方法)がのっているのですけれども、当方が所属しているところではその方法ができない、ということでなかなかはかどりません。

そこでなのですがニュートラルレッドなどの容易に染色できる方法はあるのでしょうか?
またニュートラルレッドを用いてうまく染める方法があるのでしょうか?
液胞だけをしっかり染色はできるのでしょうか?
ゆま さん

質問(登録番号0864)に対し、とりあえず参考文献を紹介しますが、さらに問題がある場合は知らせて下さい。

参考書:「植物の細胞を観る実験プロトコール(1997年、秀潤社)3600円」
第4章6節の「オルガネラの生体観察法(栗山英夫・福田裕穂著)171ページ」

液胞染色用蛍光色素
 Lucifer yellow (3.3マイクロg/ml 約1日) λex=430 λem=530
 FITC (Fluorescein isothiocyante) -dextran (約1日) λex=494 λem=520
 Neutral Red (10 マイクロg/ml 10分)
 9-Aminoacridine (10マイクロg/ml 10分) λex=405 λem=440
 Fluorescein diacetate (0.1マイクロg/ml 10分) λex=490 λem=440

注:Lucifer yellowは細胞膜透過性であり、エンドサイトーシスやアニオントランスポーターの働きで細胞内に取り込まれ、液胞中に保持・濃縮される。しかし、すべての細胞でとりこまれるとは限らない。

注:Fluorescein diacetate は原形質膜を容易に透過するが、細胞質でエステル結合部が切断され、輸送単体によって液胞中に輸送される。細胞全体の生理活性の有無を判断する際にも用いられる。



液胞の染色について、北海道大学名誉教授の吉田静夫先生から以下の回答をいただきましたので、伝えます。多分これであなたの知りたい所は分かったのではないかと思います。試してみて下さい。


回答:
中性赤による液胞の染色法についてお答えします.
中性赤のような塩基性色素は色素溶液のpHによって細胞染色の仕方が影響されます.色素溶液は蒸留水でなく水道水か井戸水で作るのが良いとされます。そ
れは、蒸留水は酸性度が高いためです.色素溶液を水道水か井戸水で作っても液胞が染色されない時は次の事を確かめてください.
中性赤の0.001%溶液(水道水で)に希薄なKOH液(0.01Nくらい)を段階的に極く少量づつ加えて色素溶液のpHを7.5〜8.0に調整して細胞染色をテストしてみて下さい.

吉田 静夫(北海道大学名誉教授)
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2006-07-18
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