質問者:
大学生
中村京
登録番号0875
登録日:2006-07-07
私は自然環境という専攻に所属しています。このため環境問題に興味を持っています。みんなのひろば
植物は地球温暖化を抑制するような効果があるのか?
今、特に地球温暖化が問題となっていて、その抑制するためとして植物の光合成が注目されています。
しかし、実際植物も呼吸してる訳ですから、地球温暖化を抑制するようには思えないのです。
光合成量が呼吸量を上回れば確かに、効果があると言えると思います。
それで質問なんですが、
1、光合成量が呼吸量を上回るのか?
2、植物によって光合成量は違うのか?
3、植物は地球温暖化を抑制するような効果があると思いますか?
簡単な事は、人間が二酸化炭素を出さなければいいですが、それは無理なの事です。
自然環境専攻の学生として勉強していく上で、これは必要な知識なのでぜひ教えてください。
中村 京 様
植物光合成が地球温暖化の抑制にどれだけ寄与しているかについて、ご質問の順にお答えします。
1.光合成量と呼吸量との関係
植物は太陽光のエネルギーによって大気中の二酸化炭素を吸収して有機物を合成し、同時に酸素を発生する光合成を行っています。一方、植物自身の生育や光合成装置(葉の細胞、葉緑体)をつくるため光合成の初期産物(糖やデンプン)をセルロ-ス、リグニン、多種類の酵素・蛋白質などに変換し、また、土壌からの無機養分吸収など、多種類の代謝を行うためのエネルギー源として光合成産物が呼吸に消費されます。これらの生育、変換、代謝に必要なエネルギーはすべて光合成産物を利用して進行する呼吸によって供給されるため、光合成量(P)から呼吸による消費(R)を差し引いた純光合成量(純炭素固定量)が、植物光合成が地球大気の二酸化炭素濃度調節にどれだけ寄与しているかの見積もりに用いられています。
植物の光合成量(P)- 植物の呼吸による光合成産物の消費(R)= 純光合成量
P>Rでなければ植物は生育できないこと(室内の弱い光の下での観葉植物が徐々に弱ってくるのはPが低く、P<Rとなるため)は明らかであり、植物が生育していれば、量の多少は別として、大気中の二酸化炭素を必ず吸収、固定していることを示しています。植物の種類、生育環境によって大きく異なりますが、RはPの半分程度です。
2.植物による光合成量の違い
森林、草原、農耕地などでの面積当りの1年間での純光合成量(純炭素固定量)がこれ迄、多く測定されています。これらの値を基として、地球の植物の光合成による二酸化炭素の固定量は1年間に炭素として11 - 12億トンと見積もられています。これらについての詳細は本コーナーの質問登録番号0845に対する回答をご覧下さい。
3.地球温暖化の植物による抑制
地球温暖化は大気中の二酸化炭素濃度の上昇によって地球から放射される赤外線が二酸化炭素によって吸収され、赤外線エネルギー(熱)が宇宙空間に放出できなくなるためです。19世紀の終わりまで少なくとも20万年の間、270 ppm(0.027%)に保たれていた大気の二酸化炭素濃度が、現在、370 ppm以上(最近では年に1.6 ppmづつ上昇)になっています。これは明らかに、産業革命以降の化石燃料の燃焼によって二酸化炭素が大気中に放出されたためですが、同時に、焼畑農業によって(純炭素固定量の大きい)農熱帯降雨林が伐採され、植物による二酸化炭素固定量が減少していることももう一つの大きな原因です。何れにしても、植林などによって植物光合成を増加させ、これによって大気中の二酸化炭素を有機物の形で保持し、二酸化炭素濃度をこれ以上に増加させないようにすることが地球温暖化の抑制に大切です。
植物光合成が地球温暖化の抑制にどれだけ寄与しているかについて、ご質問の順にお答えします。
1.光合成量と呼吸量との関係
植物は太陽光のエネルギーによって大気中の二酸化炭素を吸収して有機物を合成し、同時に酸素を発生する光合成を行っています。一方、植物自身の生育や光合成装置(葉の細胞、葉緑体)をつくるため光合成の初期産物(糖やデンプン)をセルロ-ス、リグニン、多種類の酵素・蛋白質などに変換し、また、土壌からの無機養分吸収など、多種類の代謝を行うためのエネルギー源として光合成産物が呼吸に消費されます。これらの生育、変換、代謝に必要なエネルギーはすべて光合成産物を利用して進行する呼吸によって供給されるため、光合成量(P)から呼吸による消費(R)を差し引いた純光合成量(純炭素固定量)が、植物光合成が地球大気の二酸化炭素濃度調節にどれだけ寄与しているかの見積もりに用いられています。
植物の光合成量(P)- 植物の呼吸による光合成産物の消費(R)= 純光合成量
P>Rでなければ植物は生育できないこと(室内の弱い光の下での観葉植物が徐々に弱ってくるのはPが低く、P<Rとなるため)は明らかであり、植物が生育していれば、量の多少は別として、大気中の二酸化炭素を必ず吸収、固定していることを示しています。植物の種類、生育環境によって大きく異なりますが、RはPの半分程度です。
2.植物による光合成量の違い
森林、草原、農耕地などでの面積当りの1年間での純光合成量(純炭素固定量)がこれ迄、多く測定されています。これらの値を基として、地球の植物の光合成による二酸化炭素の固定量は1年間に炭素として11 - 12億トンと見積もられています。これらについての詳細は本コーナーの質問登録番号0845に対する回答をご覧下さい。
3.地球温暖化の植物による抑制
地球温暖化は大気中の二酸化炭素濃度の上昇によって地球から放射される赤外線が二酸化炭素によって吸収され、赤外線エネルギー(熱)が宇宙空間に放出できなくなるためです。19世紀の終わりまで少なくとも20万年の間、270 ppm(0.027%)に保たれていた大気の二酸化炭素濃度が、現在、370 ppm以上(最近では年に1.6 ppmづつ上昇)になっています。これは明らかに、産業革命以降の化石燃料の燃焼によって二酸化炭素が大気中に放出されたためですが、同時に、焼畑農業によって(純炭素固定量の大きい)農熱帯降雨林が伐採され、植物による二酸化炭素固定量が減少していることももう一つの大きな原因です。何れにしても、植林などによって植物光合成を増加させ、これによって大気中の二酸化炭素を有機物の形で保持し、二酸化炭素濃度をこれ以上に増加させないようにすることが地球温暖化の抑制に大切です。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2006-07-11
浅田 浩二
回答日:2006-07-11