一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物の成長と海水濃度の関係

質問者:   大学生   大坂俊介
登録番号0891   登録日:2006-07-11
下記の実験で得られた結果がどうしてそうなるのか教えてください。

 1.シャーレに脱脂綿を置いたものを3つつくる。
 2.それぞれの脱脂綿に純水・濃度5%の海水・濃度30%の海水を含ませ、そこにマスタードの種を置く。
 3.この状態で1週間、濃度以外は全て同じ条件で放置する。

すると、濃度5%のマスータードの茎が最も長く、ついで純水、濃度30%となりました。
なぜこのような結果となるのでしょうか?
現在調査中ですが、未だに良い情報が得られないのでアドバイスをください。
大坂 俊介 様

 植物が生育できるためには、光合成に必要な水、二酸化炭素、光の他に、14種以上の元素(無機養分)が適当な割合で根に供給されることが必要です。植物の種子には、発芽して葉が光合成できるまで、また、根が無機養分を吸収できるまで成長するのに必要な無機養分は含まれていますが、その後の生育は、培地に無機養分が適当な割合で含まれているかどうかによって、大きく影響を受けます。一方、海水のようにNaClが高濃度(約3%)で含まれていると、例え植物生育に必要な他の無機元素が含まれていても、浸透圧が高くなりすぎて陸上植物は生育できません。海水の植物生育に対する影響(塩害)については、本質問コーナーの登録番号0484、登録番号0578に対する回答をご覧下さい。
 以上のことを総合し、マスタードの3種の培地での実験結果を考えて下さい。植物の成長を実験で見る場合、単に1回だけ、茎(胚軸)の長さを測定するだけでなく、種子を播いてから成長するまでの間、発芽率、子葉の成長、根の成長などできるだけ多くの観察を総合して、無機養分や浸透圧が植物の成長に及ぼす影響について考えてください。海水を農作物に施用することについて、本質問コーナーの登録番号0582に対する回答に、議論されていますのでこれも参考にして下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2012-08-25