質問者:
会社員
ひろこ
登録番号0905
登録日:2006-07-17
ペルー人の知り合いに、夜間に室内に花を飾ってはいけないと言われました。みんなのひろば
夜間、寝室に植物を置くのは毒?
彼は、トイレに花が飾ってあるのも毒だからと、夜は窓を開けてしまいます。
私が寝室に花があると言ったら、すぐに出しなさいと言われました。
彼いわく、昼間は光合成のため酸素を出しているが、夜は呼吸だけで二酸化炭素を出しているから毒だと。
ペルーでは学校でそう教えるのだそうで、誰でも知ってる常識だそうです。
理屈は分かるのですが、毒になるほどの二酸化炭素を出しているとは思えません。
ネットで調べたのですが、温度変化に弱いお花など、逆に「寝室において」となってるものが多かったです。
1件だけ、お見舞いでむせるような大量な花に囲まれていた人が、呼吸困難で亡くなったといううそか本当か分からない話がありましたが・・・・
ちなみに私が寝室においているのは、小さい花瓶1つだけです。
実際、夜間にでる二酸化炭素の量ってどのくらいなんでしょう?
隣で寝てる誰かさんほどの二酸化炭素は出してないですよね?
ひろこ さん
部屋に置かれた植物が放出する二酸化炭素の量を見積もる前に、先ず、ヒトが放出する二酸化炭素の量について考えて見ます。栄養学の知識によると、成人が一日に摂取するエネルギーの量は約2,500キロカロリーで、これを炭水化物に換算すると約625グラム、脂質に換算すると約278グラムになります。食物として摂取した炭水化物や脂質などは、筋肉や皮下脂肪などとして蓄積されることもありますが、成人の場合には、普通、次式で代表されるように呼吸の過程で分解され、この過程で放出されるエネルギーは日常の生命活動に利用されています。放出される二酸化炭素はこの反応の副産物で、その量は消費される物質の量と一定の関係にあります。
C6H12O6(例えば、ブドウ糖) + 6O2 → 6CO2 + 6H2O + エネルギー
化学の知識を思い出して計算してみると良いのですが、二酸化炭素の大気中の存在量が0.03%であることを考えると、呼吸により放出される二酸化炭素の量は結構大きなものです。部屋の換気が必要なわけが分かっていただけると思います。しかし、ここではその計算はやめることにし、ヒトが放出する二酸化炭素の量と部屋に置かれた植物が夜間に放出する二酸化炭素の量の比率を大まかに見積もることにします。植物といえども二酸化炭素の放出は基本的には上の式によっているので、両者の比較は消費される物質の量を見積もることによって行なうことが可能です。前述のように、ヒトの場合は、炭水化物換算で一日約625グラム(一時間あたり、約26グラム)の食物が消費されています。これに対して、部屋に置かれた植物が夜間に呼吸によって消費する物質の量は、例えば、植物体の重さが1キログラム(やや多い量ですね)であったとしても、その約90%は水分であることを考慮すると、実質約100グラムの植物体(乾物重量)のうちのほんの一部であるものと見積もられます(呼吸により植物体のすべてが消費される訳ではありませんので、大きく見積もってもこの値は一日あたり10グラム程度、夜間ではその二分の一以下でしょう)。もちろん、この値は植物の種類、部位や状態により大きく異なります。手元にある測定値からたどってみると、例えば、ヒマワリの場合、乾燥重量1グラムあたりの炭水化物消費量(一日あたり)は約0.2グラムとのことですので、この値は、上の大雑把な見積もりとほぼ一致するものです。そんなわけで、定性的には、夜間には植物を部屋に置かないほうが良いと言う理屈は成り立ちますが、定量的には、その程度は無視できる範囲内(ケタ違い)のことで、通常、まったく気にする必要はないと言うのが正しいと思います。
ところで、他方で、まだ十分には解明されているとは言えませんが、二酸化炭素とは別に、植物と人間との間には微量な物質を介した相互関係があります。バラの匂いのことを思っていただけるだけでその存在の重要さを理解していただけるものと思います。また、精神安定効果(?)などの側面からも植物を身近に置くことのメリットがあるのかも知れません。
因みに、1979年、オランダの医師インゲンフッス(確か、マリアテレジアの主治医)が植物による大気の清浄効果が光照射に依存することを示した本(論文)のタイトルは、"Experiments upon vegetables, discovering their great power of purifying the common air in the sun-shine, and of injuring it in the shade and at night“となっており、当時、彼は”病室などから夜間は植物を持ち出しておくこと”の重要性を強調していたそうです。しかし、これは杞憂だったわけです。
部屋に置かれた植物が放出する二酸化炭素の量を見積もる前に、先ず、ヒトが放出する二酸化炭素の量について考えて見ます。栄養学の知識によると、成人が一日に摂取するエネルギーの量は約2,500キロカロリーで、これを炭水化物に換算すると約625グラム、脂質に換算すると約278グラムになります。食物として摂取した炭水化物や脂質などは、筋肉や皮下脂肪などとして蓄積されることもありますが、成人の場合には、普通、次式で代表されるように呼吸の過程で分解され、この過程で放出されるエネルギーは日常の生命活動に利用されています。放出される二酸化炭素はこの反応の副産物で、その量は消費される物質の量と一定の関係にあります。
C6H12O6(例えば、ブドウ糖) + 6O2 → 6CO2 + 6H2O + エネルギー
化学の知識を思い出して計算してみると良いのですが、二酸化炭素の大気中の存在量が0.03%であることを考えると、呼吸により放出される二酸化炭素の量は結構大きなものです。部屋の換気が必要なわけが分かっていただけると思います。しかし、ここではその計算はやめることにし、ヒトが放出する二酸化炭素の量と部屋に置かれた植物が夜間に放出する二酸化炭素の量の比率を大まかに見積もることにします。植物といえども二酸化炭素の放出は基本的には上の式によっているので、両者の比較は消費される物質の量を見積もることによって行なうことが可能です。前述のように、ヒトの場合は、炭水化物換算で一日約625グラム(一時間あたり、約26グラム)の食物が消費されています。これに対して、部屋に置かれた植物が夜間に呼吸によって消費する物質の量は、例えば、植物体の重さが1キログラム(やや多い量ですね)であったとしても、その約90%は水分であることを考慮すると、実質約100グラムの植物体(乾物重量)のうちのほんの一部であるものと見積もられます(呼吸により植物体のすべてが消費される訳ではありませんので、大きく見積もってもこの値は一日あたり10グラム程度、夜間ではその二分の一以下でしょう)。もちろん、この値は植物の種類、部位や状態により大きく異なります。手元にある測定値からたどってみると、例えば、ヒマワリの場合、乾燥重量1グラムあたりの炭水化物消費量(一日あたり)は約0.2グラムとのことですので、この値は、上の大雑把な見積もりとほぼ一致するものです。そんなわけで、定性的には、夜間には植物を部屋に置かないほうが良いと言う理屈は成り立ちますが、定量的には、その程度は無視できる範囲内(ケタ違い)のことで、通常、まったく気にする必要はないと言うのが正しいと思います。
ところで、他方で、まだ十分には解明されているとは言えませんが、二酸化炭素とは別に、植物と人間との間には微量な物質を介した相互関係があります。バラの匂いのことを思っていただけるだけでその存在の重要さを理解していただけるものと思います。また、精神安定効果(?)などの側面からも植物を身近に置くことのメリットがあるのかも知れません。
因みに、1979年、オランダの医師インゲンフッス(確か、マリアテレジアの主治医)が植物による大気の清浄効果が光照射に依存することを示した本(論文)のタイトルは、"Experiments upon vegetables, discovering their great power of purifying the common air in the sun-shine, and of injuring it in the shade and at night“となっており、当時、彼は”病室などから夜間は植物を持ち出しておくこと”の重要性を強調していたそうです。しかし、これは杞憂だったわけです。
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2006-07-19
佐藤 公行
回答日:2006-07-19