一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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気孔の開閉の条件・蒸散と気温・湿度の関係

質問者:   教員   becky
登録番号0910   登録日:2006-07-20
蒸散が盛んに行なわれる条件として、気温が高いとき、湿度が高いときと聞いたのですが、本当でしょうか?
気孔の開閉と蒸散量との関係もできれば教えて下さい。
Becky さん

”みんなのひろば”に質問をありがとうございました。ご質問には、気孔の働きについて研究しておられる九州大学大学院・理学研究院・生物科学部門の島崎研一郎先生から、下記のようなご回答をいただきました。ご参考にして下さい。なお、本コーナーには、気孔の仕組みや蒸散について数多くの質問が寄せられ、回答がホームページに掲載されておりますので、そちらの方もご参考にして下さい。


気温が高ければ高いほど蒸散が大きいというような単純な話ではありません。蒸散は気孔が開く事によっておこりますから、一定の外部環境条件では、気孔が開けば開くほど蒸散量は大きくなります。

蒸散は、葉の内部の気相空間の水蒸気濃度(約98%)と外気の水蒸気濃度(50−75%)の差によって、濃度の高い方から低い方へ水分子が拡散することによっておきます。従って、ある一定の大きさで気孔が開いている植物を仮定すると、外気の湿度が低いほど蒸散が大きくなります。例えば、砂漠を想像してください。砂漠は昼間は気温が上がり、乾燥します。このような条件では盛んに蒸散が起きます。一方、夜になると気温が急激に低下し、湿度が上昇します。この場合は、蒸散が小さくなります。砂漠に生えているサボテンなどの植物では昼間は気孔を閉じて、夜開く事により、蒸散による水の消失を抑えている事をご存知でしょう。

気孔が開いているときに、蒸散が大きい事を簡単に知るには次の方法が良いでしょう。何か鉢植えの、柔らかい葉を持った植物を用意して、同じくらいの2枚の葉を選んで下さい。1枚には、アルミ箔などで光が当たらないようにして、もう1枚には太陽光を1時間くらい当ててください。次に、光のあたった葉と、当てなかった葉を切り取って(アルミ箔をのぞいて)、しばらく放置してください。光の当たった葉は気孔が開いていますから、もう1枚に比べて、早くしおれるはずです。

島崎 研一郎(九州大学大学院・理学研究院・生物科学部門)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2006-07-25