一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物とカルシウムの関係について

質問者:   大学生   クリハラ
登録番号0920   登録日:2006-07-26
こんにちは。以前も質問させていただきました。

今回は植物と土壌に関してなのですが、植物にとってカルシウムは必須元素のひとつであり、アルカリ土壌の塩害(Na害)軽減に効果を示すものであると認識しています。
しかしカルシウム自体もアルカリ性であるのにアルカリ土壌に散布することはよりアルカリ土壌を進行させることにはならないのでしょうか。仮にあるとすれば対策はあるのでしょうか。

またアルカリ土壌のナトリウムと施用されたカルシウムによって植物の陽イオン濃度は増加するはずですが、増加に伴う浸透圧ストレスの増大には対処できるのでしょうか。

中国のナトリウム集積アルカリ土壌を脱硫石膏による改良の資料を読んでこの疑問を抱きました。
色々調べたしたのですが、納得のいく答えが出ませんでした。
助言よろしくお願いいたします。
クリハラ さま

 脱硫石膏をナトリウム集積土壌に施用すればさらにpHが上昇するのではないかとのご質問と思います。脱硫石膏の化学的な組成が示されていませんが、これが石膏、すなわち硫酸カルシウム(CaSO4)であっても、また、炭酸カルシウム(CaCO3)であってもこれらはpH上昇の直接の原因にはなりません。苛性ソーダ(NaOH)がアルカリ性であっても食塩(NaCl)がアルカリ性でないのと同様、CaSO4、CaCO3などカルシウム塩はアルカリ性ではありません。従って、施用するカルシウムが消石灰Ca(OH)2でない限り、これらが土壌pHを上昇させる直接の原因にはなりません。Ca(OH)2も空気中のCO2と反応してCaCO3になります。
酸性土壌のpH改良のため主に炭酸カルシウムを用いますが、この機構についてJSPP質問登録番号0795に対する回答をご覧下さい。
脱硫石膏の施用によって土壌溶液の浸透圧が高くなる可能性ですが、炭酸カルシウム、硫酸カルシウムは共に溶解度が余り高くないのでそんなに問題にはならないと思います。

農業の上で土壌改良は大切な問題ですが、さらに詳細については、“植物栄養・肥料の事典”(朝倉書店、2002)など専門書を参照してください。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2006-07-26