質問者:
教員
白川
登録番号0922
登録日:2006-07-24
現在,小学校4年生になる娘がおります。みんなのひろば
樹皮の抽出方法について
毎年,この娘の夏休みの自由研究をサポートしています。
娘は,1年生の時には,庭に定植して3年になるケヤキの木に集まってきたクマゼミの数に驚き,クマゼミをテーマに自由研究に取り組みました。
その時,庭に植えている木の中でもクマゼミがよくとまって樹液を吸っている木とそうでない木があることを見つけました。
そのことを明らかにしようと2年生になった娘は,「きっとクマゼミがたくさん集まる木の汁はおいしいのだろう」と予想しました。
そこで,注射器を用意し,クマゼミと同じように樹液を吸い出し,その樹液の糖度を糖度計で計ればいいだろうと単純に考えたのですが,注射器で樹液を吸い出すということがそう簡単にはいかないということが分かりました。
ということで,2年生の時の研究はここで終わってしまいました。
3年生では,2年生の時のことがあり近所を流れる川をテーマにした自由研究に取り組みました。
しかし,4年生になって自由研究についての相談をしていると,「木のあまさ調べがしたい」ということを話すのです。
そうしている内に樹皮を抽出する方法があるのではと思いウェブで検索をしていると,アロマエッセンス作るのに抽出という方法を使っていることを知りました。
しかし,抽出方法にもいろいろあり,小学校4年生の娘にできる方法があればと検索を続けている内に本ホームページに出会うことができました。
そこで,庭の樹木の樹皮を抽出して糖度計で糖度を測ることができるための具体的な抽出方法を教えていただきたいと思います。
よろしくお願い致します。
白川 さん:
日本植物生理学会 みんなの広場 質問コーナーのご利用有り難うございます。樹皮の抽出方法に関するご質問は標記の番号で登録いたしました。回答をここにお送りします。
小学生の「夏休み自由研究」を親も一緒に考えなければならない時期になりましたね。「木のあまさ」調べをしたいとのご希望ですが、かなり難しい課題です。セミ類は口吻を樹皮に差し込んで樹液を吸いますので樹液の成分が「セミの好み」と関係あるかもしれませんが私どもでは分かりかねます。樹液については登録番号0804に説明 がありますので参考にしてください。
「木のあまさ」は樹液に含まれる糖類特にショ糖、ブドウ糖、果糖などの濃度によって決まると考えられます。ご質問の中に「糖度計で測れば」という表現がありますので糖度計(ブリックス計)は使用出来ることを前提といたします。果実や野菜などの 糖度を測定する糖度計では1、2滴(約0.3-0.6 ml)程度の試料があれば測定できるはずです。しかし、樹木の樹液をそれだけ集めることは容易でない場合が多いと思います。そこで「抽出」という操作が必要になりますが、抽出とは「生物組織や土壌、鉱物など固形状試料に含まれる成分を、溶剤などを用いて溶かし出す(溶出する)操作」のことです。生体成分で水溶性成分であれば水、70%エタノールなどを溶剤として使いますが、脂溶性成分であればアルコール系、エーテル系や石油系などの溶剤を使います。実験室などでは、試料の状態(新鮮組織か乾燥組織か、柔らかいか堅いか、などなど)、対象成分の種類などによって実験者が適宜判断して試料に含まれる対象成分を完全に可溶化する方法を見つけだして、その後の分析に用います。
このご質問の主旨では「一定量の新鮮樹皮に含まれる糖度を比較する」ことを目的と すれば良いことになりますが小学生でも実施可能な方法となるとガラスの試験管(または加熱できる小さな容器)は必要になります。以下の方法で、樹種による差がでるかでないか実施してみないと分かりませんが、家庭でも可能な方法と思います。
1.樹木の樹皮を5グラム程度採取します。樹皮は木部からきれいにはがれますが、樹木にとっては大切な通導組織ですから茎や枝の樹皮をリング状にはぎ取ってしまうと、その部分より上部は枯死します。対象とする樹木の大きさ、種類にもよりますが いちばん外側に明らかに剥がれかかっているような死んだ皮(コルク層)があればこれは取り除き、出来るだけ細かく切り、重さを測って試験管に入れます。
2.試料の重さと同じml (cc)に相当する水を加えます。試料が4グラムなら水4ml を加えて、試験管を鍋などの中で沸騰している湯の中に浸します。試料の水面が沸騰 水面よりも下に来るようにして10分くらいはおいて火を止め、そのまま放置します(加熱状態が最低1時間くらいはほしいので、鍋の湯が冷めたら加熱沸騰させてください)。出来たら、最後に試験管を斜めにしても結構ですから電子レンジに入れて中の水が沸騰し始める程度に軽く加熱します(30秒くらいと思います)。中の水の量が減るほど沸騰を続けないように。その後、放置して冷まします。
3.試験管がさめたら、斜めにして上部についている水滴を抽出液と混ぜ、よく混合します。たいていの試料片は沈むはずですので、その上澄みの糖度を糖度計で測定します。糖度計にはふつう低濃度用と高濃度用がありますが、この実験では低濃度用が適しています。
果実、野菜類であれば、潰したりすり下ろしたりした絞り汁で測定可能ですので、それらの「甘さ」を比較したら簡単で面白い自由研究になるのではないかとは思います。
日本植物生理学会 みんなの広場 質問コーナーのご利用有り難うございます。樹皮の抽出方法に関するご質問は標記の番号で登録いたしました。回答をここにお送りします。
小学生の「夏休み自由研究」を親も一緒に考えなければならない時期になりましたね。「木のあまさ」調べをしたいとのご希望ですが、かなり難しい課題です。セミ類は口吻を樹皮に差し込んで樹液を吸いますので樹液の成分が「セミの好み」と関係あるかもしれませんが私どもでは分かりかねます。樹液については登録番号0804に説明 がありますので参考にしてください。
「木のあまさ」は樹液に含まれる糖類特にショ糖、ブドウ糖、果糖などの濃度によって決まると考えられます。ご質問の中に「糖度計で測れば」という表現がありますので糖度計(ブリックス計)は使用出来ることを前提といたします。果実や野菜などの 糖度を測定する糖度計では1、2滴(約0.3-0.6 ml)程度の試料があれば測定できるはずです。しかし、樹木の樹液をそれだけ集めることは容易でない場合が多いと思います。そこで「抽出」という操作が必要になりますが、抽出とは「生物組織や土壌、鉱物など固形状試料に含まれる成分を、溶剤などを用いて溶かし出す(溶出する)操作」のことです。生体成分で水溶性成分であれば水、70%エタノールなどを溶剤として使いますが、脂溶性成分であればアルコール系、エーテル系や石油系などの溶剤を使います。実験室などでは、試料の状態(新鮮組織か乾燥組織か、柔らかいか堅いか、などなど)、対象成分の種類などによって実験者が適宜判断して試料に含まれる対象成分を完全に可溶化する方法を見つけだして、その後の分析に用います。
このご質問の主旨では「一定量の新鮮樹皮に含まれる糖度を比較する」ことを目的と すれば良いことになりますが小学生でも実施可能な方法となるとガラスの試験管(または加熱できる小さな容器)は必要になります。以下の方法で、樹種による差がでるかでないか実施してみないと分かりませんが、家庭でも可能な方法と思います。
1.樹木の樹皮を5グラム程度採取します。樹皮は木部からきれいにはがれますが、樹木にとっては大切な通導組織ですから茎や枝の樹皮をリング状にはぎ取ってしまうと、その部分より上部は枯死します。対象とする樹木の大きさ、種類にもよりますが いちばん外側に明らかに剥がれかかっているような死んだ皮(コルク層)があればこれは取り除き、出来るだけ細かく切り、重さを測って試験管に入れます。
2.試料の重さと同じml (cc)に相当する水を加えます。試料が4グラムなら水4ml を加えて、試験管を鍋などの中で沸騰している湯の中に浸します。試料の水面が沸騰 水面よりも下に来るようにして10分くらいはおいて火を止め、そのまま放置します(加熱状態が最低1時間くらいはほしいので、鍋の湯が冷めたら加熱沸騰させてください)。出来たら、最後に試験管を斜めにしても結構ですから電子レンジに入れて中の水が沸騰し始める程度に軽く加熱します(30秒くらいと思います)。中の水の量が減るほど沸騰を続けないように。その後、放置して冷まします。
3.試験管がさめたら、斜めにして上部についている水滴を抽出液と混ぜ、よく混合します。たいていの試料片は沈むはずですので、その上澄みの糖度を糖度計で測定します。糖度計にはふつう低濃度用と高濃度用がありますが、この実験では低濃度用が適しています。
果実、野菜類であれば、潰したりすり下ろしたりした絞り汁で測定可能ですので、それらの「甘さ」を比較したら簡単で面白い自由研究になるのではないかとは思います。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2006-08-08
今関 英雅
回答日:2006-08-08