一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ソラマメのさやの中

質問者:   小学生   アイスちゃん
登録番号0963   登録日:2006-08-10
(質問の背景)
『そらまめくんのベッド』と言う本を読んでソラマメのさやの中がふかふかのベッドのようになっているのを知った。
スーパーに行って買ってきて、たしかめて見たら本当だった。
枝豆やグリーンピースのさやの中にはわたのようなものはありませんでした。

(質問)
1:なぜソラマメのさやの中はふかふかのベッドのようにやわらかいのですか。
2:ふかふかのベッドは何から出来ているのですか。
3:なぜ枝豆やグリーンピースのさやの中にはわたのようなものが入っていなくて、ソラマメにはわたのようなものが入っているのですか。     
アイスちゃん さま

 大変長い間お待たせしました。いろいろな先生に質問の回答をお願いしていたのですが、なかなか回答が貰えず、今日まで待たせてしまいました。最初にお願いした先生が紹介して下さった先生が、また紹介して下さった茨城大学の遠藤泰彦先生が以下のような、分かりやすい回答をお寄せ下さりました。考えようによっては、とても回答できないような質問と思いますが、遠藤先生は、アイスちゃんの立場に立って、やさしい言葉でお答え下さっておられますので、きっと役に立つと思います。本当に長い間お待たせして済みませんでした。


1:なぜソラマメのさやの中はふかふかのベッドのようにやわらかいのですか。

ソラマメのさやの中には、ソラマメのたねができます。ふかふかのベッドは、ソラマメのたね(ソラマメのあかちゃん)が、生まれてすぐの小さいときからだんだんと育ち大きくなるまでのあいだ、たねをやわらかくつつんであげて、まもっているのです。

2:ふかふかのベッドは何から出来ているのですか。

ふかふかのベッドは、ソラマメのさやのいちぶぶんです。ふかふかしているのは、さやのほかのばしょとはちがって、空気をたくさんふくんでいるからです。

3:なぜ枝豆やグリーンピースのさやの中にはわたのようなものが入っていなくて、ソラマメにはわたのようなものが入っているのですか。

どうして、枝豆やグリーンピースのさやにソラマメとおなじわたのようなものがはいっているとおもったのですか。枝豆やグリーンピースが、さやをつけ、マメをつけるということがソラマメとおなじだから、そうおもったのかな?
だけど、枝豆のさやにはたくさん毛がはえていますし、グリーンピースのさやは、ソラマメにくらべてとってもうすいということを知っていますか。それぞれにとくちょうがあるんだよ。
さやは、中のたねをまもるはたらきをするとともに、たねをとおくへいどうさせるはたきをもちます。枝豆やグリンピースやソラマメのさやはそれぞれ、じぶんのとくいなほうほうで、これらのことをやっています。つまり、枝豆とグリーンピースとソラマメでは、とくいなほうほうがちがうということです。

遠藤 泰彦(茨城大学)


アイスちゃん さま

先日お送りした回答がお役にたったというメ-ル有難うございました。実は、ソラマメの質問はとても難しい質問だと思ったので、いろいろな先生に回答をお願いしてありました。まず、ソラマメのことに詳しい遠藤先生から回答を頂けたので、その回答を先日お送りしましたが、少し遅れて、細胞壁のことに詳しい大阪市立大学の保尊隆享先生からも回答が送られて来ました。細胞壁についての回答もありますので、遠藤先生の回答と合わせて、参考にして下さい。

柴岡 弘郎(JSPPサイエンスアドバイザー)

 この本のことは知りませんでしたが、なかなかよいことが書いてありますね。そして、書かれている内容について実際にソラマメを買って調べてみたアイスちゃんさんも偉いと思います。
 マメは植物にとっては子供に相当するものですから、さやの中で大事に育てます。その際、さやの一番内側の部分(内果皮)が発達してマメを包み、保護しています。この部分、すなわちベッド、はマメが幼い間はふわふわと柔らかいのですが、ふつう、マメが成長するのに伴ってどんどん固くなってゆきます。枝豆(ダイズ)やグリーンピース(エンドウ)の場合がそうです。ソラマメでは、この部分がいつまでも柔らかいまま保たれるため、マメが大きくなってもふかふかのベッドに包まれることになります。マメの種類によっては、マメ自身の皮(種皮)が発達して、服のように自分を保護することもあります。つまり、ベッドや服はソラマメだけでなく多くのマメが持っているのですが、その柔らかさがマメによって異なるわけです。
 どうしてソラマメのベッドはいつまでも柔らかいのか。これはとても難問です。科学者は、これが何からできているかとか、どのようにしてできるのかについては、研究して答えが出せるのですが、「なぜか」について答えるのは簡単ではありません。マメの仲間では、他に、フジのような大きなマメをつくる種類のいくつかも柔らかいベッドを持っていますので、マメの大きさが関係するのかも知れませんが、残念ながらそれ以上のことはお答えできません。
 ベッドに相当する部分は、初めはマメ自身と同じように、生きた細胞というふくろからできていますが、やがて細胞としての働きがなくなり、細胞を包む細胞壁という成分だけでつくられるようになります。特に、細胞壁の中のセルロースという繊維が主な成分です。アイスちゃんさんはワタ(綿)を知っていますね。ワタの繊維は、実の中の種子のまわりに繊維細胞が成長してできたもので、その成分のほとんどはセルロースです。細胞のいわれはちょっと違うのですが、ソラマメのふかふかのベッドのワタのようなものは、本当の綿と同じ成分からできていることになります。

保尊 隆享(大阪市立大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2006-08-22
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