一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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かいわれ大根の生育に及ぼす汚れた水の影響

質問者:   中学生   F・TORRES
登録番号0969   登録日:2006-08-12
夏休みの自由研究で、てんぷら油と洗剤にまいたかいわれ大根の種が発芽するか実験しました。
水道水、100%てんぷら油、50%てんぷら油、10%てんぷら油、10%洗剤の5種類で実験した所、水道水と10%てんぷら油のみが発芽しました。
(10%てんぷら油の生育は、水道水に比べてわずかですが・・・。)
洗剤に関しては、界面活性剤が原因かと思い調べましたがはっきり分かりません。
てんぷら油に関してもPHか濃度の問題かと思いますが、同様に調べ切れません。
てんぷら油と洗剤の何が原因で発芽しないのか教えて下さい。
F・TORRES さん:

日本植物生理学会 みんなの広場 質問コーナーのご利用有り難うございます。かいわれ大根の生育に及ぼす汚れた水の影響についてのご質問は登録番号0969で受け付け、お答えします。

使ったてんぷら油を家庭で流しなどに直接捨てると下水汚染の原因となることは確かなことです。それは、下水は洗剤をはじめ多種類の物質が混ざり合ったものですから油も乳濁化し長い時間をかけて少しずつ分解されるからです。ですから、てんぷら油を「汚染物質」そのものと見て、しかも水と混ぜて「50%」とか「10%」などと見なして発芽実験に使うことは、かなり乱暴な計画ですね。初歩的な、油と水の関係や植物の種子発芽に必要な条件を理解していれば考えない計画ではないでしょうか。種子の発芽には水が絶対的に必要ですから100%のてんぷら油の中で発芽しないのは当たり前のことです。「50%」てんぷら油を作ったつもりでも水と油は決して混合しませんから、すぐに二層に分離してしまいます。たまたま分離した水の中にいた種子は発芽するかもしれませんが油が上にありますからすぐに死んでしまうはずです。「10%」てんぷら油でも同じことですが、油が少ないので分離したときに水層を全部覆い尽くさないため水の中と同じことがおきたのでしょう。
市販の洗剤製品は製造者の意図の下にいろいろな合成界面活性剤とこれまたいろいろな増量剤、漂白剤などを目的に応じて独自に処方して混合したものです。どんな種類の合成界面活性剤をどのくらいの濃度で処方されているか、どんな助剤、増量剤が含まれているかなど製造者によっても、使用目的によっても違うものでその内容は全く分かりません。ですから、「10%洗剤溶液」と表現したところで科学的には意味のあるものではありません。この洗剤製品がどのくらいの濃度で「洗い効果」があるかはどこかに表記されているはずですが、10倍希釈液は市販洗剤製品ではかなり濃い濃度だと思います。界面活性剤というのは脂質(油成分)を溶かします。細胞膜は脂質が重要な成分です。ですから界面活性剤の中に生体組織を入れれば細胞膜はこわれ細胞は死んでしまいます。
自由研究といえども、よく考えて実験計画を立てないと意味のある結果はでません。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2006-08-18
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