一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物について

質問者:   その他   横井
登録番号0097   登録日:2004-07-06
はじめまして。

最近ふと気づいた事なのですが、花びんにさしてある植物の枝は根もないのに、なぜ花びんの水を吸うことができるのですか?
僕は高校では生物を受講していないので植物に関しては中学の理科程度の知識しかないのでメールをした次第です。

あと参考になる文献とかもあれば教えていただきたいです。

横井さん

 植物が根から水を吸い上げ、地上部の葉や茎に送る機構はおよそ次のように考えられています。まず根の細胞が水を取り込み、それを根の中心にある道管に運びます。道管は死んだ細胞の中身がカラになったパイプの様なものです。ここでは、根はエネルギーを使って積極的に水を道管に送り出すことができます。しかし、それだけでは水を地上高く持ち上げることはできません。
 道管は非常に細いパイプ(直径は100分の1ミリ程度)ですから、水はその中で凝集して毛細管現象のような力で上に上がっていきます。ただし、それだけでは十分ではありません。この道管の中の水は、最終的に葉の表面にある気孔から蒸発していきますが、この水の蒸発する力が、植物体内でつながっている細い水柱をさらに引き上げることができます。
 お尋ねの花びんにさしてある植物の枝は、根は持っていませんから根による水の取り込みはできませんが、茎の中には道管がありますから、その中を毛細管現象や水の蒸発の力(蒸散と言います)によって水を吸い上げることができます。
 この蒸散の力が働いている時は、水は上へ上へと吸い上げられているので、道管の中は陰圧になります。そのため植物を空気中で切り離すと、陰圧になった道管の中に空気が入ってしまいそれ以上水が上がっていくことができなくなります。それを防ぐために、実際に植物を花びんにさす時などは水切りといって、水の中で茎を切ることをします。そうすると道管の中の水柱が花びんの中の水とつながるので、根がなくても水は上に上がっていくことができます。
 
 いわゆる植物生理学の教科書が一番良いですが、少し難しすぎるかもしれません。講談社のブルーバックスシリーズや、ナツメ社の図解雑学シリーズなどに参考になる本があると思います。
神戸大学
 三村 徹郎
回答日:2007-08-06