一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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草にもリグニンは含まれるのですか?

質問者:   会社員   さと
登録番号0980   登録日:2006-08-16
草と木の違いについて調べています。教えてください。
草と木の大きな違いのひとつにリグニンが多く含まれていることが言われますが、草にもリグニンは含まれているのですか?
また、木でも葉や樹皮にはリグニンがないと考えてもいいのですか?
ヨシやゴボウは木に似ていますが、リグニンは含まれていないのですか?
さと様

樹木代謝化学がご専門で、循環型社会に不可欠な再生可能資源である木質を代謝工学的に研究されている京都大学生存圏研究所の梅澤俊明先生に回答をお願いしました。


1)木と草の違いは
木は、地上部が枯れず、冬越しをして地上部が毎年太る(幹の直径方向に肥大成長する)ものです。専門的には、維管束形成層が毎年分裂して二次肥大成長するものということになります。一方、草は、地上部が枯れ、年毎に太ることが出来ないもの、すなわち、維管束形成層の年毎の分裂による二次肥大成長が認められないものです。なお、タケは樹木ではなく草ですが、樹木図鑑には載せていることが通例です。ただ、木と草の違いは厳密には定義できず、余りこだわることは、本質的な意味はありません。たとえば、ナスは、日本では地上部が冬越しできず、草ということになりますが、熱帯地域では、地上部が枯れず多年に亘り太るといわれており、木ということになります。

2)木と草の違いとリグニンの関係
一般的に草のリグニン含量は木より少ないといわれておりますが、本質的に、木と草の違いとリグニン含量の多少には関係はありません。草にもリグニンは必ず含まれています。したがって、ヨシにもゴボウにもリグニンは含まれています。専門的には、維管束植物はすべてリグニンを合成します。

3)葉と樹皮のリグニン
葉にも樹皮にもリグニンは存在します。樹皮の内側の丸太の部分(これを二次木部といいます)に比べると、含量は少ないですが、葉や樹皮にもリグニンは存在します。葉や樹皮を構成する細胞のすべてにリグニンが存在するわけではありませんが、葉や樹皮の細胞のあるものにはリグニンが沈着しています。

梅澤 俊明(京都大学生存圏研究所)
植物生理学会広報委員、京都大学
河内 孝之
回答日:2006-08-23