一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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サボテンについて

質問者:   中学生   赤紫
登録番号0984   登録日:2006-08-17
私の部屋にはサボテンがあります。
受験勉強のため、一年生の植物の単元を復習していたときに「そういえば、サボテンってどこで呼吸しているんだ?」と思いました。
そして、よくよく考えてみると、「呼吸」が分からなければ「蒸散」も分からない。
それにサボテンってどこに養分をためているの?
そもそもサボテンってどういう作りになっているの?
と、私にとって全く謎に包まれた植物であることに気付きました。

質問
・なぜ、どのようにして水の無い地域で生きていけるのか。
・「光合成」および「呼吸」、「蒸散」はどこで行っているのか。
・なぜ、棘を持つ必要があったのか。

登録番号0882の「二酸化炭素を固定」とはどういうことかも教えていただけると嬉しいです。よろしくお願いします。
赤紫 さん:

日本植物生理学会 みんなの広場 質問コーナー有り難うございます。
サボテンについてのご質問は標記の登録番号で受け付け、回答をお送りします。

鉢植えにした観賞用のサボテンにはたくさんの種類がありますし、うまく育てればきれいな花も咲きますので勉強部屋においておくと心を和ませてくれますね。学校などで習う植物とはかなり違った形の植物なので、赤紫さんの疑問がでてきたのだと思います。科学の心とはそういう疑問を持つ心のことですね。
サボテンと言う植物は大きく3つのグループに分けられますが、日本で観賞用に市販されているサボテンのほとんどは、そのうちの2つのグループ(ウチワサボテンの仲間とハシラサボテンの仲間)です。このグループの特長は、茎が多肉化して緑化し光合成の場であること、茎は節でつながり、茎節と呼ばれる構造を持つことです。葉は若いときに刺がでる刺座に出来ますが、すぐに退化して落ちてしまいます。
*なぜ、どのようにして水の無い地域で生きていけるのか。
サボテン類が生育している砂漠は砂だけの砂漠と違って、「乾燥した荒れ地」といった方がよい地域で、年間雨量がたいへん少なく乾燥していますが、100mm前後の雨は降ります。ときには夕立のような強い雨が局所的に降り、一時的に川が出来ることすらあります。また、砂漠地帯は、日中は非常に高温になりますが、夜は急激に冷えて、ときには氷点下になることさえあり、空気中の湿気が水滴となります。サボテンをはじめ多肉植物と呼ばれる植物は、吸収した水や栄養を貯えるように葉や茎が厚く(太く)なっています。また、ときには根が地中深くまで伸びて地中の水を利用するものもあります。
*「光合成」および「呼吸」、「蒸散」はどこで行っているのか。
*「二酸化炭素を固定」とはどういうことか
上に説明したようにサボテンでは茎が光合成の場で、気孔も茎にあります。気孔は光合成や呼吸に必要な二酸化炭素と酸素を取り込んだり、排出したりするものです。ですから光合成も蒸散も茎で行っていることになります。呼吸を、酸素を取り込んで二酸化炭素を排出する働き、とするならやはり茎で行っていると言えますが、呼吸はすべての生きている細胞がしています。サボテンの光合成は、ふつうの植物の光合成と仕組みが少し違っています。ふつうの植物は、昼間、気孔をあけて二酸化炭素を取り込み光合成作用で糖を作っていますが、サボテンでは昼間は気孔を閉じて二酸化炭素を取り込んでいません。これは、日中、高温のときには気孔を閉じて蒸散を少なくして、水の損失を防ぐためと考えられています。気孔は夜にあけて二酸化炭素を取り込み、細胞内のある化合物と結合させてリンゴ酸に変化させて細胞内に貯えます。このように気体の二酸化炭素を体内の化合物に結合させることを「二酸化炭素の固定」と言います。夜は光がないので光合成は行えませんが、昼になると、昼間「固定」してリンゴ酸に一次貯えた二酸化炭素を取り出し、光の作用で光合成を行います。気孔は閉じていても光合成で酸素が出来ますから細胞は窒息することはありません。サボテン類の光合成の仕方については登録番号0908も参考にしてください。
*なぜ、棘を持つ必要があったのか。
この質問にお答えするのはたいへん難しいことです。非常に頑丈で針のような刺もありますので、一般には、動物からの食害を防ぐため、と説明されています。登録番号0816も参考にしてください。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2006-09-09