みんなのひろば
研究ポスター発表の心得(ポスターの作成や要旨の書き方について)
研究ポスター発表とは
研究発表の目的は、自分達が行った研究の成果を他の人たちに知ってもらうことにあります。従って、一人よがりの説明ではなく、他の人の関心を惹き、容易に理解できるようにできるだけ分かりやすくまとめることが大切です。
皆さんが発表する手段は、「ポスター」形式なので、論文形式の報告とは違って、研究の情報を細部まで表示することはできないですし、その必要もありません。従って、限られたスペースに研究内容(成果)のキーポイントをどれだけ簡潔にまとめてアピールできるかを考えてポスターを作成して下さい。
ポスター作成の心得
ポスターをどのようにまとめるかは皆さんの力量ですので、その作成の仕方は指示しませんが、含めて欲しい内容と生物学における標準的な論文の書き方を下記に列挙しますので、参考にして下さい。ポスターに含められない詳細は、必要であれば、閲覧者に口頭で説明して下さい。
- 研究のタイトル
- 名前と所属(学校名)
- 要約
行った研究の簡潔な概要で、できるだけ短い文章(100〜150字)が望ましい。
- 序論(前書き)
植物(生物)科学のこの分野で、この研究テーマを取り上げるに至った動機と、この研究で証明したい仮説のようなものがあれば、それを書く。また、過去の関連する研究など自分(達)の研究の背景となる主な情報の紹介があれば紹介する。ポスター閲覧者はこの序論を読んで、発表を最後までみてみようかと思うので、序論はいわばキャッチ・フレーズのような役割も持っています。
- 材料・方法(手順)
- 実験(観察)材料の名前は学名も併記し、変種(var.)や栽培品種(f.)の場合はそれも含めて併記、また、購入、採取などの入手先も明記。
- 特別な薬品、材料、器具などの仕様を記載。
- 自作の実験装置などがある場合は、写真あるいは図面で説明。
- 実験の場合は、温度、光(光度、波長域、光源)などその条件を正確に記述。
- 野外観察などの場合は、その時期の気象条件と気づいた周囲の環境条件を記載。
- 実験の場合は個々の操作を逐一記述するのではなく、何を、どんな条件で、どのように処理したか、そしてどのように測定したかが容易に理解できるように、簡潔に記述する。
- 観察の場合は可能な限り主観的判断を排除して、定量的な表示をする。
- 結果
- 実験であれ観察であれ、自分(達)が発見した情報をデータと共に文章で説明する。
- データは表あるいは曲線/折線、棒、円形(パイ)などのグラフあるいは写真で提示する。
- 表は上部にタイトル、表下に注などを書き、グラフや写真は下部にタイトルと注などを書く。
- 表は実際の数値をあげるので、データ間の比較がし易い。
- 線グラフは、濃度、温度など変数に対応する変化を連続的に示すことができ、実際のデータ(数値)がなくても二つの変数の間の数値を予測できる。
- 棒グラフは変数の間のデータ(数値)の関係を際立たせて比べたい時などに有効である。
- 円形グラフはパーセンテージで表したいデータに用いられる。
- 線グラフ、棒グラフでは横軸、縦軸にとる数値は明確に単位を記載する。
- 説明の文章は客観的に記述し、主観的な判断はもとより、推測や予想はしない。
- 結果を書く時はいきなりまとまった記述を試みるのではなく、結果(データ)をよくみて、読み取れることを一つ一つ短い文で、メモのように書き記し、最後にそれら並べ替えたり、切り繋いだりして、簡潔に纏まった正確な文章にするとよい。
- 結論と考察
研究で得られた情報をまとめて正確に文章で提示する。その上で自分(達)の仮説が正しいと判断するのか、まだ不十分であると思うのか、間違っていたとするのかを論じ、今後どうしたいかを述べる。
- 参考資料・文献
- 謝辞
研究の指導、アドヴァイス、実験材料の入手、機器の使用などで世話になった方々へのお礼の言葉。
要旨作成の心得
ここで言う「要旨」とは、皆さんが研究発表にあたり事前に提出する印刷のためのA4サイズ1枚のまとめです。
上記のポスターの書き方と基本は変わりませんが、紙面が少ないので、ポスターに書いた内容をさらにコンパクトにして下さい。
例えば、図表はなるべく文章で表現するとか、参考文献や謝辞はポスターにのみ記載し、要旨にはポスター参照と記載するなど、工夫をして下さい。
発表について
閲覧者にポスターの内容を説明する時は、一人の閲覧者のみに多くの時間を割くと、他の人の閲覧を逃してしまうことになりかねません。自分達の研究発表をできるだけ多くに人に聴いてもらえるよう工夫して下さい。
要約や序論に相当することは、要旨を読めば済むことなので、研究内容で特に聴いてもらいたいエッセンスだけを発表すれば、さらに関心のある人は質問で確かめるでしょう。
紙面の都合でポスターに掲示できなかったグラフや表はプリントしておいて、参考(補助)資料として閲覧者に渡すのもいいでしょう。説明の際、ポインター(指示棒)を使うと便利です。