一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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出芽と栄養生殖の違い

質問者:   教員   ねこ先生
登録番号5891   登録日:2024-05-13
セイロンベンケイソウは無性生殖の中で何に分類されるのか教えてください。また,合わせて出芽と栄養生殖の定義を教えていただけると幸いです。
不定芽の出芽との記載を教科書で見たのですが,栄養生殖に分類されるのではないかと思っています。

出芽は完全な個体の形成が行われるもので,栄養生殖は段階的な個体形成が行われるものと理解しています。そのため,高等な生物ほど栄養生殖に分類されるのではないかと考えているのですが,このように考えて良いでしょうか。ご教示いただけますと幸いです。
ねこ先生

この度は植物Q&Aへのご質問ありがとうございます。
出芽、栄養生殖、無性生殖は高校生にも整理し混乱のないように教えてあげたいですね。

地球上には長い歴史の間に微生物、動物、植物などさまざまな生き物が出現し、それぞれが多様な方法で増殖し、子孫を残しながら現在に至っています。こうしたさまざまな様式を混乱することなく整理することはなかなか容易ではないようです。
このような時にたとえば私は「植物学の百科事典」(日本植物学会編、丸善出版)を参考にします。
日本植物学会はこちらの日本植物生理学会とも繋がりが強く、専門の植物研究者が用語や現象の定義となるように注意を払い編纂しているものです。

これによりますと、植物の繁殖は種子による種子繁殖と栄養器官を介する栄養繁殖(栄養生殖)の2つに分けられます。
種子繁殖の中で例外的に無性生殖する場合が知られています。また栄養繁殖は全て無性生殖になります。無性生殖の中には、むかご、葉上不定芽など様々な様式が知られています。出芽という言葉は動物の無性生殖の例としてよく使われますが、植物の無性生殖の様式を表すためには出芽という用語は用いられないようです。

植物Q&Aのサイトの「植物Q&A 検索」に栄養生殖、無性生殖、出芽などを入力し検索していただけますと関連する回答をご覧いただけます。たとえば次の回答には高校の教科書の記述に関する指摘、出芽の用語の混乱を解説していただいています。
https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=1654

以上ご参考になれば幸いです。
藤田 知道(JSPP広報委員長)
回答日:2024-05-17